サブテレニアン15周年記念月間
『Largo Longueur』 濵田明李
2021/5/2-5
濵田明李 はまだ・みり
1992年高知県南国市生まれ。武蔵野美術大学油絵学科油絵専攻 卒業。
パフォーマンスで作品をやり始めしっくり来る。その中では、達成を目指さなかったり、中止したり、その場所の特性を取り入れたり、オブジェを持ってきて、15分とか20分とかのあいだに起きる一連のことを観客と共有するというのが特徴。
2017年から2019年位までのメキシコに住み、好奇心の赴くままに学ぶ。
他のアーティストとの有形無形の恊働や自主企画にも積極的。
ーーーサブテレニアンでは、過去2回、濱田さんの企画でパフォーマンス公演を行っていただきました。その後、2017年から2019年までメキシコにいらっしゃったそうですが、どのようなことをしていたのですか。
外国人学校でスペイン語やメキシコの歴史などを勉強していました。学校はアートとは関係なく、出自や仕事も様々な、10代から60代まで幅広い世代の方が通っていました。
また、メキシコでパフォーマンスを行っているアーティストを知人に紹介してもらって、美術館やギャラリーなどで行われているワークショップ等に参加しました。自分でもパフォーマンスを行いました。
メキシコの平均年齢は20代で、日本は40代なんだそうです。端的に若者が多いという印象があります。デモも盛んで、たくさん人が集まってきます。
悲しいことに女性に対する犯罪は多いです。地下鉄の中には行方不明の若い女性の写真がたくさん貼ってあって驚きました。女性をフォーカスしている展示は多かったです。貧富の格差も大きく、先住民への差別も感じました。
ーーー濱田さんとはNIPAFの公演で知り合いましたね。
はい。NIPAFの霜田誠二さんに武蔵野美術大学の映像科の授業で学んで、公演にも参加しました。いろんな国の人が参加していて、外国にも何度か行きました。
---私はサブテレニアンで、東急ハンズの買い物袋や、アマゾンで届いた段ボール箱をその場で開けていくというパフォーマンスを拝見しました。無機質な物と、それに向かい合っている濱田さんとの距離感が印象的でした。一方、メキシコの路上とアルゼンチンのギャラリーで行ったパフォーマンスをネットで拝見したのですが、こちらは布や、観客が運んできた石などの素材を使っていて、身体との接触もあり、違いを感じました。
私のパフォーマンスでは、身体にアプローチするよりも、愛着のない物質を使うことが多いです。日本で行ったパフォーマンスも、メキシコ、アルゼンチンで行ったパフォーマンスも、大きな違いはありません。「物を動かしたらどうなるのか」ということに興味があります。身体はそうした物質の延長のようにとらえています。身体も物も違いがなくて、腕や足も道具というイメージがあります。
ーーーサブテレニアン、ギャラリー、路上など様々な場所でパフォーマンスを行っていますが、違いはありますか。
路上でも、ハプニングのように突然行うわけではなく、告知をして行っているので、大きな違いは感じていません。屋内で行うときも、自分のパフォーマンスは風景のように感じてもらうことを考えています。
パフォーマンスにもいろいろなものがあって、観客が不在でコンセプトだけのものもありますが、私の場合は観客がいることが前提です。
ーーースマホのゲームを使ったパフォーマンスも行っていらっしゃいましたね。
はい。京都のHAPSが開催した展覧会に、ゲームを使ったパフォーマンスで参加しました。ゲームの参加者を募って、ボイスチャットをしながらゲームの空間を共有します。シューティングのゲームなので対戦を行うのですが、私はその間、小説を朗読していました。
こちらは、いろんなハードルを乗り越えていくという点も面白かったです。アプリをダウンロードしたり、その前にスマホの容量を確保するために他のアプリを消してみたり。能動性に干渉できるのが面白かったですね。
ーーーコロナ禍で感じたことはありますか。
イベントの宣伝がしづらいな、と感じています。親も心配だと言ってきます。2020年の秋からはイベントの機会は多くありました。
メキシコ行きのチケットを持っているのですが、コロナ禍で行けなくなったまま今に至っています。
あと、お酒を飲むのが好きなのですが、「飲み会の状況っておもしろかったよなー」と。夜中に友達とどこかに行っちゃったり、それまでいなかった人が来たり、またいなくなっちゃったり。面白い時間の共有の仕方していたような気がします。それってパフォーマンスっぽいような。
生活の中にパフォーマンス的なものが紛れ込んでくることが面白いと感じています。生活にどのようにパフォーマンスの要素を入れていくか、パフォーマンスのある生活とはどんなものなのか、そんなことを考えています。
ーーー先ほど、メキシコは端的に若者が多いとおっしゃっていましたが、若者だから言いたいようなことはありますか。
過去の遺産(文化の貯蓄)をどのように受け継いでいくか、それが困難だと感じています。若い人ほど不可分所得が大きいというか。
---文化の享受が所得の大小で制限されてしまうのは、貧しい社会のように感じますし、文化そのものも衰退していくような気がしますね。
最後に、サブテレニアンでのパフォーマンスについて教えてください。
実は、単独でのパフォーマンスは珍しいんです。昼と夜でちょっと違うことをやります。昼はスペイン語の"Largo"、夜はフランス語の"Longueuer"として、二つの似ているけれども違っているものについて考えてみたいと思っています。
公演の後、毎日22時にZoom でロビー室を開催します。こちらは、作品をご覧になっていない方も参加できますので、ぜひご参加ください。
(聞き手・さたけれいこ)
濱田明李『Largo Longueur』公演詳細、ロビー室詳細はこちら→『Largo Longueur』ホームページリンク
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