インタビュー・対談

2016年8月30日 (火)

板橋ビューネ2016参加劇団インタビュー:テラ・アーツ・ファクトリー「演劇が社会とその共同体に生きる者のある種の鏡とするなら、絶えず別の表情、姿を映し出す鏡であるべきだと思います。」

板橋ビューネ2016「ナンセンス」(http://itabashi-buhne.jimdo.com/)に参加する劇団に、劇団の軌跡や、みどころについて、別冊サブテレニアンがインタビューをいたしました。おのおのの劇団の魅力に気付かされる点が数多くありました。ぜひご一読ください。

テラ・アーツ・ファクトリー「 演劇が社会とその共同体に生きる者のある種の鏡とするなら、絶えず別の表情、姿を映し出す鏡であるべきだと思います。

板橋ビューネ2016:テラ・アーツ・ファクトリー『三人姉妹 vol.1』(@東京・サブテレニアン:9月29日19:30~/30日14:00,19:30/10月1日14:00,19:30/2日14:00)

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『恋 其ノ参』(2016)撮影:石澤知絵子

---このインタビューにお答えいただく方のお名前と劇団の中での役割を教えてください。

 

A 代表の林英樹です。

 

 

---劇団のメンバー構成、人数、役割などを教えてください。

 

林 劇団体制を取っておりませんので固定したメンバーというのは現時点ではいないのですが、長く関わっている人が多いです。最長は現在の団体の前身の劇団からの滝康弘で38年、彼は知的な面での強力なブレーンです。横山、井口とは14、5年の付き合いになります。今回の舞台では日常部分と非日常身体、双方を背負っております。若林、関山、加藤、長尾はワークショップからの付き合いで10年~5年となります。

 

 

---一番最初に上演した作品について教えてください。

 

林 『サバイバル・コロニー』(1985年、江東文化センター大ホール)、東京アートセレブレーションというフェスティバルで勅使川原三郎や岸田事務所+楽天団(『恋』上演)、劇団解体社、海外の劇団などが参加しておりました。

 

 

---劇団の代表作について教えてください。

 

林 『メタアイランド』、『CATALY』、『デズデモーナ』、『ノラ』シリーズ、『アンチゴネー/血』、『ジュリエット/灰』、『ヒロコ』、『最後の炎』、『マテリアル/糸地獄』。

 

 

---思い出深い公演がありましたら教えてください。

 

林 『カサンドラ』(1999)公演。公演中止になりました。それがきっかけで濃密な集団作業の必要性を感じ、2000年代に某専門学校で教えてました元教え子たちと10年近く集団創作を行いました。

 『カサンドラ』はそれまで10年ほどヨーロッパに出かけて得た経験、特に冷戦崩壊と同時に始まったユーゴスラビア内戦と内戦を契機としたヨーロッパ演劇人の様々な活動に刺激を受け、戦争をテーマとしたギリシア劇と現在の戦争を対置させる構造の作品をめざしました。プロデュース公演として集めた俳優たちとの作業は困難を極め、結局、公演までたどり着くことは出来ませんでした。その失敗と挫折が深く影響し、その後の活動の基盤となっております。

 

 

---プロデュース公演とのことですが、どのような集団だったのですか。外国の方もいらっしゃったのですか。

 

林 小劇場から新劇まで、20代~50代まで全部で40名の俳優によるプロダクションです。カナダ人も一人いました。

 

 

---その時の経験があって、いまがあるのですね。劇団の旗揚げから現在まで、思い出深いエピソードがあれば教えてください。

 

林 『デズデモーナ』ペルー公演(1996)。公演終了直後に日本大使館占拠事件があり楽屋見舞いに来てくださった青木大使や歓迎会を開いてくださった日系人の方たち多数が人質になったこと。タイミングが少しずれていたら私たちもそこにいた可能性があった。

 『デズデモーナ』クロアチア公演(1999)。この公演は日本人パフォーマー1名、残りの俳優・パフォーマーは全てクロアチア人でしたが、丁度、コソボ紛争が始まり、NATO空軍機がユーゴ(セルビア)に爆撃に行く空路の途上に開催都市があり、参加のフェスティバル自体が中止に追い込まれました。しかし、現地メンバーがこういう時こそやるべきと頑張ってくれて、かなり苦闘しましたが結局、実現いたしました。
 
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『デズデモーナ』(2014)撮影:森信英 
 
---板橋ビューネ2016に参加した理由を教えてください。

 
林 以前からサブテレニアンで公演をしたいと考えていたところ丁度タイミングが合った、ということです。

 
 
---ありがとうございます。今回のテーマ「ナンセンス」について、感じたことを教えてください。


 
林 今回の作品がこのテーマに合っているかどうか迷いましたが、大きな枠組で戦後日本の国家レベルの物語をナンセンスと捉えてみると戦前と戦後の非断絶をテーマとしたこの作品と入れ子構造を作ることが出来るのではないかと考えました。私たちが生きる時間、生きてきた時間は戦後日本に属するわけですが、この作品は「平和国家」、「戦前とは断絶した民主国家」という私たちの思いこみ、想念の物語に対してその固定観念を打ち砕く批判性を持っている、少なくとも疑問符を提示するための応答を試みているテクストであると考えました。演劇が社会とその共同体に生きる者のある種の鏡とするなら、その鏡は同語反復であってはならない。絶えず別の表情、姿を映し出す鏡であるべきだと思います。この作品を通して戦時と戦後の断絶を個人レベルから見ると何が変化したのか、あるいは変化しなかったのかが表出されていて、同時に現在、保守政治家などによって物語化されつつある「戦後レジーム」なる言説を異化する、つまり物語を解体する(無意味化/ナンセンス)ような、ある種の亀裂を生みだしうるテクストと思えたのです。
 
 
---興味深いお話です。今回のみどころを教えてください。


 
林 時間を主題にしています。

 日常の会話部分と非日常身体との対置により、私たちの存在を根拠づけている「人間性」とその根拠となる文明、特に近代文明の中で人間の自然性の喪失、日常からの死の消失を反映する身体の様相を批評対象とし、同時に非日常身体によって構成される時間軸の提出によって過去、記憶ということで成立する個人幻想の解体を内包した舞台になると思います。

  
  
---好きな音楽、本、人物など、演劇以外の分野で影響を受けたもの(人物)がありましたら教えてください。
 
林 ピンクフロイド、ディープ・パープル、ボードレール、ランボー。

 
 
---昨今、日本でおきていることで気になることは何かありますか。

 
林 人が壊れつつある。そんな中、1936年ベルリンオリンピック、1940年幻の東京オリンピックを想起させる国威発揚のオリンピックが4年後にあるが、その間に壊れかけた人間を絆、団結という繰り返し使われてきた薄っぺらな精神の抑圧構造でまとめて行こうとする勢力が政治家、財界、マスコミなどを支配しつつあるのが不気味。ただただ今の日本は不気味です。

 
 
---昨今、韓国でおきていることで気になることは何かありますか。

 
林 演劇に対する検閲。パク・グニョン氏の作品の排除に象徴。

 
 
---パク・グニョンさんは、劇団コルモッキルの方ですか。助成金の辞退を強いられたり、国立伝統音楽院での上演が直前にキャンセルされたことなどでしょうか。

 
林 はい、そうです。

 パク・グニョン氏はコルモッキルの主宰・劇作家・演出家です。

 15年前に彼の『代代孫孫』をリーディング演出したことがあります。彼の戯曲の日本での初訳初演だと思います。

 
 
---
昨今、世界各国でおきていることで気になることは何かありますか。

 
林 紛争の拡大と人種、宗教による差別、偏見の増幅。その根底に欲望のシステムである資本主義がグローバル化によってもはや国家や政治のコントロールを越え、世界を少数の富める者と多数の貧困層という形で分断しその対立が先鋭化しつつあることがあげられる。衝突の度合いはより深まりどこかでこの世界は破綻するのではないかと感じている。

 
 

---演劇を好きになったきっかけはなんですか。

 
林 いつ好きになったのかわかりません。好きかどうかもわかりません。やっていると苦しいことの方が多いです(笑)

 
 
---演劇を始めたきっかけはなんですか。

 
林 学生時代、劇団座長の友人に手伝いを頼まれたのですが、その後、彼が失踪し所属する役者を含め、全ての責任を背負うことになりました(笑)
 
 

---貴重なお話をいただきありがとうございました。

私も含めた、演劇を志す人たちにとって、得るところが大きいです。上演もとても楽しみにしています。

(文責:さたけれいこ)

2016年8月26日 (金)

板橋ビューネ2016参加劇団インタビュー:ペリカン船「『何で貴方は敵なんでしょう』。その言葉はサラッと放たれました。」

板橋ビューネ2016「ナンセンス」(http://itabashi-buhne.jimdo.com/)に参加する劇団に、劇団の軌跡や、みどころについて、別冊サブテレニアンがインタビューをいたしました。おのおのの劇団の魅力に気付かされる点が数多くありました。ぜひご一読ください。

 
ペリカン船「『何で貴方は敵なんでしょう』。その言葉はサラッと放たれました。」
 
 
板橋ビューネ2016:ペリカン船『戦場のピクニック』(U-25公演@東京・サブテレニアン:9月3日19:00~/4日15:00~、19:00~)
【U-25公演】・・・25歳以下の若手が古典戯曲に挑みます。U-25プロデュース:岡田和歌冶(雲の劇団雨蛙)

 

---このインタビューにお答えいただく方のお名前と劇団の中での役割 を教えてください。

 

A 劇団ペリカンの田中達也です。旗揚げメンバーです。 

 
 

---ペリカン船は田中さんの個人ユニットなのですね。劇団ペリカンのメンバー構成、人数、役割などを教えてください。 

 
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田中 劇団員は現在4名で、旗揚げ公演に参加して頂いた役者さんが入りたいと志願し新たに仲間が増えました。

 今年11月の第二回公演に向けてパワーアップした作品をお届けすべく絶賛稽古中です。(※)

※劇団ペリカン第2回公演

『残念ながら愛してる』

2016111日(火)~117日(月)

脚本・演出 南部鉄男

会場  SPACE梟門(きょうもん)

 

 

---劇団の旗揚げ公演について教えてください。

 

Tanaka_3 田中 去年11月に劇団を主宰の南部と共に旗揚げしました。『新宿さくらんぼ物語』という作品を書き下ろし、201511月に新宿のサンモールスタジオにて上演しました。サンモールスタジオでの劇団の旗揚げは自分達の劇団が初です。

 

 

 

---南部さんのことを教えてください。

 

田中 南部とは知り合いの舞台を観劇した後の打ち上げで、偶然隣の席になり意気投合しました。劇団ひまわり出身の俳優で、映像、舞台の仕事をしています。とても不思議な感性を持っている方です。今回は僕の個人ユニットなので関わっておりません。

 

 

---板橋ビューネ2016に参加した理由を教えてください。

 

田中 去年板橋ビューネ2015U-25に役者として参加したのですが、今回は演出として見方を変えて挑戦したいと思ったのです。 

 

 

---今回のテーマ「ナンセンス」について、感じたことを教えてください。

 

田中 ナンセンスとは何を持ってしてナンセンスなのかと、捉え方次第でとても広がりのある言葉だと思いました。

 

 

---なぜ「戦場のピクニック」という作品を選んだのか、作品について感じていたことを教えていただけますか。

 

田中 自分が初めて「戦場のピクニック」と出会ったのは、路上演劇です。去年開催された「多摩1キロフェス」という野外パフォーマンスのフェスティバルの中にあった演目の一つです。オムニバス形式の中に「戦場のピクニック」のワンシーンが抜粋されていました。劇中、「何で貴方は敵なんでしょう」という台詞があります。その言葉はサラッと放たれました。その時、一言でそれに対する答えは出せないなと感じました。

 

---今回のみどころを教えていただけますか。

 

田中 環境によって変化するものと普遍的なもの。

 

 

---戦場を肌で感じていたアラバールと、現在の私たちとでは、大きな乖離があるように私は思うのですが、田中さんはどう思われますか? 田中さんがおっしゃっている「環境によって変化するものと普遍的なもの」の中に答えがあると思うのですが、よろしければ、詳しく教えてください。

 

田中 現在の自分には戦争の実状を想像する事が限界で、戦場のリアルはその時代に生きて肌で感じている者だけが体現できると思います。しかし、今、自分が感じるのは、戦争とは色々な状況、環境に巻き込まれて生まれているものだということです。

 それを直接的に伝えるよりも、身近な物に例えて伝えたらどうなんだろうと思っています。身近な物から、戦争というシュチュエーションで意味が変わるもの、変わらないもの、という違いを楽しめたらと思っております。

 

---ありがとうございます。身近な物も、きっと戦場につながっているのでしょうね。そんな想像にはたらきかけるような舞台になりそうですね。田中さん個人のことについても、質問させてください。好きな劇団、劇作家、演出家、俳優など、演劇の分野でのお気に入りがありましたら教えていただけますか。

 

田中 つかこうへい さんです。

 

 

---好きな音楽、本、人物など、演劇以外の分野で影響を受けたもの(人物)がありましたら教えてください。

 

田中 尾崎豊 です。 

 

 

---写真では伺えない、田中さんのお人柄が表れていますね。お答えいただき誠にありがとうございました。上演を楽しみにしています。

(文責:さたけれいこ)

2016年8月25日 (木)

板橋ビューネ2016参加劇団インタビュー:ガクタミ「『カフカなのに笑える!!』そんな作品を目指しました。」

板橋ビューネ2016「ナンセンス」(http://itabashi-buhne.jimdo.com/)に参加する劇団に、劇団の軌跡や、みどころについて、別冊サブテレニアンがインタビューをいたしました。おのおのの劇団の魅力に気付かされる点が数多くありました。ぜひご一読ください。

 
ガクタミ「『カフカなのに笑える!!』そんな作品を目指しました。」
 
 
板橋ビューネ2016:ガクタミ『変身』(U-25公演@東京・サブテレニアン:9月3日19:00~/4日15:00~、19:00~)
【U-25公演】・・・25歳以下の若手が古典戯曲に挑みます。U-25プロデュース:岡田和歌冶(雲の劇団雨蛙)

 

---このインタビューにお答えいただく方のお名前と劇団の中での役割 を教えてください。

 

Kimg0788_4 MARCOです。ガクタミの演出を担当しています。

 

 

---劇団の旗揚げ公演について教えてください。

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MARCO 今回がこの劇団の初公演です。私の「カフカの作品がやりたい」という願いをきいて、集まってくれた人たちです。

 

 

 

---板橋ビューネ2016に参加した理由を教えてください。

 

MARCO 去年のUー25にも参加して、自分と同年代の演出家の作品に触発されました。自分ももっと表現を広げたいと思い、今年のUー25にも参加することにしました。

 

 

---去年のU-25では、「劇団さぼてん」として、岸田國士氏の「命を弄ぶ二人」を演出されましたね。

 

MARCO 劇団さぼてんは、U-25の為に集まったメンバーだったので、その後は解散という形をとりました。今以上に、演出について右も左も分からなかったので、メンバーの方には大変な思いをさせてしまったと思います。でも、あの経験がなければ、今ほどもっと演劇について学びたいとは思わなかったように思います。

 因みに、去年「劇団さぼてん」で出演した田中さんは、今年はペリカン船の演出家として、同じUー25に参加されています。

 

 

---今回のテーマ「ナンセンス」について、感じたことを教えてください。

 

MARCO 普段あまり馴染みがないので、焦りました。募集要項の例に挙げられていた作家の作品をいくつか読んでみました。ルイス・キャロルの不思議の国のアリスと鏡の国のアリスは家にあったので、「ナンセンスってなんだろう」と思いながら、読み直しました。いろんな作品を見てみると、ユーモア溢れる表現が沢山あって、舞台上で表現出来たら楽しそうだなと思いました。

 

 

---カフカの「変身」をえらんだ理由は何ですか。

MARCO 最初は作品を探すのに苦戦しました。U-25のプロデューサーの岡田和歌冶(雲の劇団雨蛙)さんからカフカもナンセンスだと聞いて、学生時代に思い入れのあったカフカの変身に決めました。

 

 

---今回のみどころを教えてください。

 

MARCO 「カフカなのに、笑える!!」、そんな作品を目指しました。グレーゴルがどんな姿になったのか。想像しながら楽しんで頂ければと思います。

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---好きな劇団、劇作家、演出家、俳優など、演劇の分野でのお気に入りがありましたら教え下ください。

 

MARCO 安部公房さん。現実とは違う世界観の中に、でも現実的なところがあって、グサリと心に来るような出来事が起こるところが好きです。

 学生時代、仲間と「半腸人類」を上演した時に、医者役で出たことがあるんです。その時は他の作品を探したりすることはなかったのですが、最近、作品を読んで「面白い!」と思いました。最近のマイブームは安部公房の作品探しです。

 

 

---好きな音楽、本、人物など、演劇以外の分野で影響を受けたもの(人物)がありましたら教えてください。

 

MARCO ドストエフスキーの「罪と罰」と太宰治の「人間失格」。

 かっこよくない、人としてダメな主人公の話が好きです。特に、飾りのない人間を描いているこの二つはお気に入りです。

 

 

---演劇を好きになったきっかけはなんですか。

 

MARCO 宝塚の舞台を見たことです。舞台って面白いと思ったのは、これがきっかけでした。

 題名は覚えていないのですが、和風ファンタジーの作品でした。確か小学校高学年くらいの時に見たと思います。実家が田舎で、プロの舞台に触れる機会が殆どなかったのですが、親を説得して、新幹線で博多座まで連れて行ってもらいました。最近では、いろいろな舞台を見られるので、宝塚は見に行かなくなってしまいました。最後に見たのは2年前くらいでしょうか。

 

 

 ---演劇を始めた頃、大変だったことはなんですか。

 

MARCO 高校生の頃、大会の前日に台本が出来上がり、当日も本番ギリギリまで稽古するということをよくしていました。

 

---大変な経験をされてきたのですね。今回はどんな舞台になるのでしょうね。お忙しいところ、質問にお答えいただき誠にありがとうございました。上演を楽しみにしております。

(文責:さたけれいこ)

2016年8月17日 (水)

板橋ビューネ2016参加劇団インタビュー:楽園王「楽園王にとってイヨネスコの『授業』は特別な作品です。自信があり、評価もされ、初演時から演出も変えていません。」

板橋ビューネ2016「ナンセンス」(http://itabashi-buhne.jimdo.com/)に参加する劇団に、劇団の軌跡や、みどころについて、別冊サブテレニアンがインタビューをいたしました。おのおのの劇団の魅力に気付かされる点が数多くありました。ぜひご一読ください。

第一弾は楽園王さんです。
 
「楽園王にとってイヨネスコの『授業』は特別な作品です。自信があり、評価もされ、初演時から演出も変えていません。」
 
板橋ビューネ2016:楽園王『授業』(@島根・チェリヴァホール:2016年8月27日19:00~/28日14:00~ @東京・サブテレニアン:9月8日20:00~/9日20:00~/10日15:00~,19:00~)
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---このインタビューにお答えいただく方のお名前と劇団の中での役割 を教えてください。

 

A 長堀です。楽園王の主宰をしております。楽園王は、劇作家としての自分の作品の発表の場としてスタートしたのですが、今では古典戯曲を演出することの方が多いです。

 

 

---楽園王の公演は、全て長堀さんが演出しているのですか? 長堀さんが出演したことはありますか?

 

長堀 演出はすべて僕です。昔は出演もしていました。旗揚げの作品「メタファンタジア」の初演は僕が主役でした。野田秀樹の影響が大きかったので、作・演出が出演もするものだと思っていました(笑)。

 

 

---劇団のメンバー構成、人数、役割などを教えてください。

 

長堀 劇団員制をとっていないので僕一人です。制作から何から劇団の運営に関わることは基本一人でやっています。でも仲間には恵まれているので、もちろん多くの支えがあって楽園王は公演できています。

 

 

---一番最初に上演した作品について教えてください。

 

長堀 高校演劇を除けば、「新・劇団女王の館」から依頼されて上演した「プルラウンド」という作品が小劇場のデビュー作です。今から30年以上前、東池袋にあったサンライズホールで上演しました。今でも僕の芝居に出てくれている植村せいさんがこの時も主役として出演しました。

 

 

---「プルラウンド」の作者を教えていただけますか? また、サンライズホールはどのような劇場だったのでしょうか?

 

長堀 「プルラウンド」は僕の作品です。利賀演出家コンクール(※)に出るまでは戯曲を書くことを中心に仕事をしていました。サンライズは当時ポピュラーな小劇場だったと思います。舞台奥がどんどん高くなっていて上にハケられる変わった劇場だったと思います。

※2008年より「利賀演劇人コンクール」に改称。

 

 

---劇団の代表作について教えてください。

 

長堀 今回上演することになるイヨネスコの「授業が自他共に認める代表作だと思います。賞(※)もいただいたし。

 僕が書いたオリジナルでは、「メタファンタジア」という旗揚げの作品は、その後も何度も上演し続けています。

 それと、奥村拓くんの一人芝居「華燭」も、何度も何度も上演しています。 「華燭」は大正から昭和初期に活躍されていた流行作家で舟橋聖一さんの短編小説です。小説として発表していますが、劇団の活動もなさっていた舟橋さんの、戯曲としても十分通用するものです。ついこの間も、劇場ではありませんが、「日本のラジオ」を主宰されている屋代さんの結婚披露宴で上演したばかりです。僕は稽古だけで本番は見てないのですが、好評だったみたいですよ。披露宴で30分も一人芝居に時間使うのは、けっこう心配だったんですが。

※2004年利賀演出家コンクール優秀演出家賞

 

 

---それは興味深い公演ですね。他にも思い出深い公演がありましたら教えてください。

 

長堀 25年間も劇団をやっているとたくさんありすぎて(笑)。利賀のコンクールで谷崎純一郎の「お国と五平」を上演した時は、仕込みからバラシまでずっと雨にやられた野外劇で、物凄く大変でしたね。

 夏なのに凄く寒くて、出演者に「今回は中止にします」と言える立場にないことを申し訳なく思って、それで「上に行ってやる」と思わせた(笑)。 

 でも今は「雨も含め、良かった」と言われる意味がよく分かる。好評でした。稽古場でも女優さんの演技に鳥肌が立つくらいだったので、コンクールでの上演に自信を持っていました。自分にとってエポックメイキングな作品が「お国と五平」です。

 

 

---「雨も含め、良かった」とおっしゃったのは、審査員の方ですか?

 

長堀 審査委員長の菅孝行さんです。菅さんからは、今でも「長堀くんはこの作品で賞を取るべきだった」と言って下さいます。でも問題もあり(※)失格でした(笑)。

  この翌年から、鈴木忠志さんは自分の演出作品として「お国と五平」を上演することになりますが、僕がコンクールで上演した影響は大きいと思っています。鈴木さん自身がそう言っていましたし。僕の作品でお国を演じた女優さんは、今でも鈴木さんが稽古場などで「長堀んとこにはすごい女優がいて」と言って、語り草になっているそうですよ。塩山さんという女優さんで、今はお休み中ですが、いつか復帰する予定です。あ、賞をいただいた「授業」初演時にはもちろん出演していました。

※ テキレジ(脚色)の問題。

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---板橋ビューネの今回のテーマ「ナンセンス」について、 感じたことを教えてください。

 

長堀 募集の時から掲げられている、「『ナンセンス』はアナーキズムである。」から始まる文章にはシビレましたね。よこたたかお君のセンスが光る一文。

 

 

---今回の『授業』のみどころを教えてください。

 

長堀 楽園王にとってイヨネスコの「授業」は特別な作品です。自信があり、評価もされ、初演時から演出も変えていません。12年間演出を変えずに上演し続けられる作品を持っているということが、楽園王の劇団としての実力も示していると思いますし、何より、誰が見ても面白い。もう本当、騙されたと思って是非時間作って足を運んでほしいと願っています。傑作です。久堂さんと杉村さんは初演時のメンバーで相変わらず素晴らしいですし、昨年の札幌公演からの村田さんと今回初合流の岩澤さんは楽園王の近作を支えてくれているレギュラー的存在で、今最も信頼している役者さんです。間違いない4人が演じています。

 

 

---私も拝見したことがありますが、何度でも見たい作品です。劇団の軌跡についての質問からは外れますが、昨今、日本でおきていることで気になることは何かありますか。

 

長堀 僕は今50歳で、半世紀この国の日常を生きて、そして平和を疑っていなかった。今、日本を政治的に経済的に牽引している方たちが起こそうとしている変化には、50年間感じたことのない不安を感じさせます。

 昔、手塚治虫や石ノ森章太郎が描いたSF漫画の世界が、冗談みたいに実現してきている感じ。人間は愚かだな、と感じます。

 でもその中で、特に落胆させるのは、テレビや新聞などの「報道」の墜落ですね。報道が権力におもねるばかりでなく、国民一人一人の声に耳を傾けてくれれば、純粋にジャーナリストとして立ち上がれば、少しは希望が見えるのに、と思っています。

 日本の報道と、同じ事柄を書いた外国の報道の差は、今や昔テレビで見た北朝鮮の人々の生活に匹敵する酷さで、最近では外国のニュースを拾わないと本当のことが分からない、なんてことになってしまっている。困ったものです。

 

 

---「一人一人の声に耳を傾けてくれれば」という思いは、長堀さんの今後の表現活動に影響していくのかもしれませんね。今回も、そしてこれからも、劇団のご活躍を楽しみにしています。貴重なお話をありがとうございました。

(文責:さたけれいこ)

2014年7月 8日 (火)

『キル兄にゃとU子さん』アフタートーク2013/12/2(月) 西堂行人氏(演劇評論家) 

ゲスト:西堂行人氏(演劇評論家)×赤井康弘(サブテレニアン・サイマル演劇団)司会:菅野直子氏(99roll、劇作家・演出家) 
 
菅野 「キル兄にゃとU子さん」の初演の脚本がシアターアーツに掲載されたのは、西堂さんが編集長を務めていた時なのだそうですが、掲載した理由をお聞かせいただけますか?
 
西堂 震災を扱った最初の作品だったということが一つあります。作家が震災をどう受け止めているのかということに興味があったのですが、疑心暗鬼の中で無我夢中で書いた作品だと思いました。現実に半身を曝している状態で、ある種のドキュメント性が色濃くありました。俳優達もどう扱ってよいのか戸惑いながら、それでもやらなくてはという確信を持ってやっていて、舞台に強さを与えていました。シアターアーツは商業誌ではないので、実験性や問題性を持った戯曲を載せるということを考えており、掲載するのに相応しいと思いました。

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『キル兄にゃとU子さん』アフタートーク2013/12/1(日) 大信ペリカン氏(満塁鳥王一座)

ゲスト:大信ペリカン氏(満塁鳥王一座)×赤井康弘(サブテレニアン・サイマル演劇団)司会:菅野直子氏(99roll、劇作家・演出家)
 
菅野 今日は作者の大信ペリカンさんを招いてトークを行います。大信さんはリライトにあたってどのようなことを考えたのか教えていただけますか。
 
大信 何度か打ち合わせをして、情報をもらったりもしたのですが、結局、ほとんど自分の考えに基づいて書き直しました。
 震災から2年8ヶ月経っていることや当事者性の問題、韓国人が出演することなど、いろいろと考えたのですがうまい回答を見出すことができなかったんです。当事者性ということを考えても、私たちがこれを初演した段階においてすら、被災者という大きな括りの中では当事者性を持ってはいるものの、自分たちが被災したわけではなく、当事者からは外れているのです。それは結局、演劇というものの基本、本質であって、自分は王子でもないのにハムレットを演じる、被災者でない人が被災者のふりをして被災者を演じることになるわけです。そこに疑いを持っていたので、この芝居にも当事者は出てきません。キル兄にゃもU子さんも出てこない。登場人物は、彼らが住んでいたその街を知っていくことで呆然とするという話になっているのです。だから、再演の時もそのままやってもらった方がいいんじゃないかと思ったんです。
 また、2年8ヶ月という時間に関しても、震災直後に書いた時の衝動を、時を経てもそのままやることが有効なんじゃないか、と「あまちゃん」の最終回を見た時に感じました。「あのとき」を思い出すという行為の中に、2年8ヶ月という時間が見た人の中に芽生えてくれればよいと思って。また、「普遍性」やパースペクティブな視点を持たせるために「1970年の女」という新しいキャラクターを出しました。初演時より、もう少し広い空間からU子さんの街を照射していこうと思ったのです。

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『キル兄にゃとU子さん』アフタートーク2013/11/30(土) 柾木博行氏(シアターアーツ編集長) 

ゲスト:柾木博行氏(シアターアーツ編集長)×赤井康弘(サブテレニアン・サイマル演劇団)司会:菅野直子氏(99roll、劇作家・演出家)

 
菅野 今回の企画について、赤井さんより再演にいたった経緯をお聞かせいただけますか?
 
赤井 この作品は2011年6月にサブテレニアンで初演して大きな反響を呼んだ作品です。震災や原発を扱っていますが、40年前からの視点も含めて、個人と政治の関わりという上でもアプローチができる脚本で、5年たっても10年経っても再演する価値がある作品だと思いました。ずっと再演したいと思ってはいたのですが、震災から2年、3年経っている状況や、福島の俳優ではなく東京と韓国の俳優でやるという枠組みでリライトして上演できないかと思い、企画が動きはじめました。

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2013年4月28日 (日)

満塁鳥王一座『白鳥の歌』SENTIVAL!2013参加〜大信ペリカンインタヴュー

満塁鳥王一座『白鳥の歌』 SENTIVAL!2013 参加

5/25(土) 19:00★・26(日) 15:00
★終演後トークあり
※開場は開演の30分前
前売2000円 当日2500円 学生1000円

作:アントン・チェーホフ
構成・演出:大信ペリカン

http://subterranean.jp/event.html#tori 

---2011年6月にSUBTERRRANEAN で上演された「キル兄にゃとU子さん」(SENTIVAL!2011参加)は評判を呼び、横浜、青森、仙台、北九州と各地で公演やリーディングが行われました。各地の反応はどのようなものでしたか? 印象に残った出会いなどございましたらお聞かせください。

 思い出深いのは北九州芸術劇場で行ったリーディングです。時期的に震災からほぼ一年後の3月10日だったんですよ。3.11から一年経って、震災を振り返るという企画で、北九州の役者さんたちとリーディングを行ったんです。この作品は震災の当事者性が作品の軸になっているのですが、ここではそれを分かち合うのはやめようと思いました。役者さんだからそういう演技はできるのですが、北九州の人が感じた震災に対する思いを表現したくて、短い時間でしたがお互い話し合いながら作品を作りました。

 終演後に飛ぶ劇場の泊篤志さんが出演者にインタビューをしてくれたのですが、ある役者が感極まって泣いてしまったんですね。舞台袖でその様子を見ながら、当事者性ではない何かを、役者と作家の間で分かち合えたようで、印象深かったですね。役者と作家の間に震災があって、距離感もある中で、それぞれ震災をどう捉えるか、ということを表現できたと思います。

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2012年6月 6日 (水)

ブルーノプロデュース 橋本清 インタビュー

 6月20日から25日まで、サブテレニアンにてブルーノプロデュースの『サモン』(SENTIVAL! 2012参加)が上演されます。ブルーノプロデュースは、2009年にもサブテレニアンで公演を行っていただいたことがあります。(『カシオ』2009年12月)
 その後、主宰の橋本さんは東京デスロック演出部での経験と、ブルーノプロデュースでのいくつかの公演を経て、《ドキュメンタリーシリーズ》という作品を作りはじめます。今回上演される『サモン』は、その第三弾です。今回は稽古場にお邪魔して、稽古見学をさせていただいたあと、橋本さんに作品制作についてお話をうかがいました。

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2011年12月17日 (土)

OtoO Presents 白鳥英一インタビュー

SUBTERRANEAN Dialogue
OtoO Presents「結〜他愛ない話のオムニバス〜」
2012年2月10日(金)〜12日(日)

 【SUBTERRANEAN Dialogue】 2012年2月は OtoO Presents の公演です!
 OtoO Presents 代表の白鳥英一さんは、仙台で俳優、ナレーター、作家、演出家として活躍しています。3月11日の地震の後は NGO の活動で被災地を訪問する仕事も積極的に行っています。様々な思いを抱えて活動されているのですが、今までの仕事が一時的に激減したことも理由の一つなのだそうです。
 白鳥さんに、被災地を訪問した時の状況や、芝居の持つ力についてどのように考えているのかなど、お話をお聞きしました。

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