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2024年8月

2024年8月20日 (火)

犬猫会「パラナ・ポラー」稽古場レポート10

本日は稽古場最終日
最後の通しの前に、各場ブラッシュアップ出来る箇所をあたり、早回しも行った

本日の部分稽古でも、役者がしっくり来ていなかった箇所をいくつか明確にしていった
ここまで来たからこそ見えてくる部分もあり、時間の許す限り最善を模索する
柔軟に対応してくれる役者二人には大いに助けられた
お互いに気になる箇所を出し合い、その解釈やその部分のズレを直していく

ここまでの稽古で、役同士の関係性は作ってくることに拘ってきた
何か上手くいかない時は、自分一人になるのではなく、相手をよく見て、相手からもらうようにするのが一番確実であると思う
今回の芝居は色々と気を回さなければいけない部分も多く、何かに気を取られると他が抜けてしまうという事も多々ある
そんな時も焦らずに、力まず、相手が何を自分に訴えてきているのかを受け取り、自分は何を求めているのかを返していってほしいと思う

最後の通し自体は上手くいっている部分もありつつ、導入部と最終場の難しさが見えたところもあった
場当たりやゲネを通しても更に発見されるものも出てくるだろう
日々見つかるものを修正していき、お客様にお見せするその瞬間までブラッシュアップしていくつもりだ

明日からは劇場入りとなり、遂に本番も目前である
二週間、同じ稽古場で稽古が出来、とても有意義な時間を過ごせた
今日まで一日一日と確実に積み上げてきたものを本番でも積み重ねていってほしい

演出という立場は方向性を決めるものではあるが、そこに辿り着くまでの道中は何人もの人の手によって成り立っている
今回この稽古場レポートを書くことで改めてその事に気付いた
私一人では作ることの出来ない世界が今目の前に出来上がりつつある
最終的にどのような舞台に仕上がるのか、是非劇場に観に来て頂きたい
ここまで拙い稽古場レポートを読んでくださり、ありがとうございました

(水野玲子)

犬猫会「パラナ・ポラー」

作:マルハ・ブスタマンテ

翻訳:仮屋浩子

出演:宝意紗友莉(文学座)・山下智代(犬猫会)

演出:水野玲子(犬猫会/文学座)

音楽:後藤浩明

​公演期間:2024.8.22-25

会場:STUDIO ZAP!

2024年8月19日 (月)

犬猫会「パラナ・ポラー」稽古場レポート09

本日は部分稽古をしてから、通しを2回行った

あと二回の稽古とはいえ、まだまだ深められる部分は深めていく
そして作品を良くする為にはこれまでの解釈を変えることも必要である
ある程度のこちら側からのサジェスチョンはありつつも、最終的に何より大切なのは役者が違和感なく芝居を出来る事だと思っている
本番があけたら、あとは役者がどうその世界観で生きられるかになる
そこで無理なく生きられるようにする為の稽古期間であると思っているから、稽古場では何をしても良い、といった安心感がある事が大切になる
でないと役者の可能性を阻めてしまう

今回、この安心感を持って色々と挑戦しやすい環境づくりに関しては、まだまだ風通しの良くない部分もあったなと反省している
しかし役者二人共自分達で考えて挑戦していってくれたので、稽古場では活発な挑戦が行われて来たと思う
その姿勢のお陰で今日も有意義な時間が過ごせた
現段階でも落ちどころに迷いがあった箇所も、今日一日を通して、最終的な通しで一つの筋の通ったものが見つかったように思う

とはいえ、今日見つかったものがしっかりと、ただなぞるだけではなく、役者にとってのガイドとして根付く事が出来るか
稽古はあと一日、場当たり・ゲネを通して、そして本番の中でも、その都度でのリアルの中で、根付かせていってほしい

明日は部分稽古と、早回し稽古をしてからの、最後の通し稽古となっている
早回し稽古をしっかりと稽古に取り込んだ事はないのだが、今回の作品だとこれは一つ体に馴染ませるには良い方法なのではないかと思っている
これまで取り入れるタイミングがなかったのでこの段階にはるが、これが役者にとってプラスになる事を願っている

最終稽古も有意義に過ごせる様に頑張りたい

(水野玲子)

犬猫会「パラナ・ポラー」

作:マルハ・ブスタマンテ

翻訳:仮屋浩子

出演:宝意紗友莉(文学座)・山下智代(犬猫会)

演出:水野玲子(犬猫会/文学座)

音楽:後藤浩明

​公演期間:2024.8.22-25

会場:STUDIO ZAP!

 

2024年8月18日 (日)

犬猫会「パラナ・ポラー」稽古場レポート08

本日は音楽の後藤浩明さんと音響の金子さんが入っての本格的な音合わせをしてからの通し稽古となった

音合わせでは、頭から順を追って音の確認をしていく
事前の打ち合わせはしていたが、ハッキリと決めない中で音楽音響共に準備をしてもらっての合わせだったが、お二人共臨機応変にその場で対応してくださり、大変助かった
理想に近いものや予想外のもの、多様な形となっていてなかなか面白い形で皆様に届けられそうである

今回の芝居は音の力が非常に大きく、役者も大いに音の力を借りて空気を掴んでいたと思う
ここに更に照明の力が加わるのは非常に楽しみである
今回も各セクションに信頼のおける方々を配置できてとても安心感が強い
総合芸術ならではの楽しさを体感していただけるだろう


今日の通しは、細かい部分ではこれまでの稽古できちんと積み上げて来られていることが実感出来た
それと同時に、大筋での流れにまだ納得いかない部分がある
作品をどう解釈して、どう魅せていくか
今回は稽古をしていく中で発見していくことも多かったのだが、やはり元々の構想段階の甘さが露呈している部分もある
役者が上手く積み上げられていない箇所に関して、今一度明日の部分稽古の中で組み立てたいと思う

また、明日は部分稽古をしつつも、一日の稽古の中で二回通しを行う予定である
本番も一日二回公演であり、どれだけ体力、集中力を使うのかを確認する為でもある
今回は全七公演で、それぞれの回のその瞬間のリアルを保ってもらうためには、ある程度の体力が必要になる
今回の役者二名はきちんと体力作りが出来ているので大丈夫だとは思うが、何せ二人で世界を構築しなくてはならないからそこは大変な作業である
明日は実際に感覚を掴んでもらい、本番に備えてもらおうと思う

残り二日、されど二日
まだまだ良くなる
有意義に過ごそうと思う

(水野玲子)

犬猫会「パラナ・ポラー」

作:マルハ・ブスタマンテ

翻訳:仮屋浩子

出演:宝意紗友莉(文学座)・山下智代(犬猫会)

演出:水野玲子(犬猫会/文学座)

音楽:後藤浩明

​公演期間:2024.8.22-25

会場:STUDIO ZAP!

2024年8月16日 (金)

犬猫会「パラナ・ポラー」稽古場レポート07

本日は後半シーンの稽古をした後、通しを行った

当たり前のような話だが、たった一つの台詞でも、それをどう解釈するかによって作品全体の方向性が変わることがある
今回の『パラナ・ポラー』には解釈の余地が存分にあり、やりがいもあればその分暗闇の中をもがき続ける時間も多く必要になる
あらゆる可能性から、何を選び取っていくのか
この時期であったとしても、探求し続ける必要もあるし、同時に決めていかなくてはならない
残り時間も限られてきてはいるが、まだ細部に拘って作っていきたいと、焦る気持ちを抑えての1日となった

細部に拘りたい、といいつつ、なかなか今回はパワープレイで見せている部分もあり、整合性の取れている部分とそうでない部分の違いもまだ残っている
今日のシーン稽古ではそこの整合性を取るために、役者の介錯も確かめつつ、何がゴールに向かうには最的確な道順か探っていく
同じ台詞でもその中にある複数のサブテキストの何をどの割合で見せるのかで、それが相手にどう影響を与えるかが変わってくる
今回出演の役者二人は、どちらも相手の状態にビビットに反応出来る役者である
だからこそ、少しニュアンスが変わるだけでも思わぬ方向に進んでいく
細部を詰めて大きく道をそれることのないようにしつつ、自由度の高さを保ったまま本番を迎えられるようにしていきたい
ちなみに、私のやり方はただただ役者にどう解釈しているかを語ってもらい、それで擦り合わせるという地道なものになるから時間はかかるが、台詞を発する側、受ける側、両方の介錯を合わせるには、なんやかやこの方法は悪くないのではないかと思っている
演出としてどうしたいのかと言うことを先に伝えてほしいと言われることもあるが、私が押し付けたものは得てして面白くなく、役者自身から生み出してもらうというのが一番面白いものになると確信を持っているため、極力こうしてほしい、とは言わないようにしている
あくまでこの作品でどういう事を伝えたいのか、だけを共有していく
(そこを上手く共有出来ているかはまた別問題であり、言語化することが私自身の課題ではあるが)

とはいえ、役者陣はようやく体に馴染んできた部分もあるようだった
それに加えて、まだ足りていない部分も鮮明になってきたようである
明日は台風の為急遽OFFとなるので、それぞれが体を休めつつ、今一度自分の中で整理して明後日からの残り三日間に臨んでほしい
明後日は後藤浩明さんの生演奏との合わせを中心に行う予定
非常に楽しみである

(水野玲子)

犬猫会「パラナ・ポラー」

作:マルハ・ブスタマンテ

翻訳:仮屋浩子

出演:宝意紗友莉(文学座)・山下智代(犬猫会)

演出:水野玲子(犬猫会/文学座)

音楽:後藤浩明

​公演期間:2024.8.22-25

会場:STUDIO ZAP!

2024年8月15日 (木)

犬猫会「パラナ・ポラー」稽古場レポート06

本日は昨日の通しのノートを伝えつつの部分稽古

一日一回の通し稽古をやれるのがベストな芝居と思いつつ、やはり集中してシーン稽古をやる事も必要であり、今日はそのタイミングとしてはベストであったと思う

今日最大の発見としては、全編の流れの中での役の身体に溜まっていくであろう『疲労感』(という呼び方が正しいかはさておき)のバランスの問題である
各場毎のトピックスに気を取られ、時間の流れとそれによる負荷を忘れてしまっていた
今作はパラナ川を下って逃げていく、というのが大筋であり、その大前提が薄れてしまってはいけない
役者と共に、このシーンではどのくらいのものだろうかと議論しながら組み直していった

また、テンポを上げるために、意識と身体の連動具合の調整も行った
演じる際に自分では必要な間と思っていても、普段の生活ではもっと色々なことを同時に行っているものであり、ある種のスピード感というものが存在する
同時に複数の事を行う意識の部分は、ある程度訓練も必要なところもある
しかし稽古場にてその一つひとつを明確にしておけば、より正確な、嘘のないスピード感で先に進んでいくことはある程度可能となる
稽古場の中で出来る限りの情報を見つけ出しておきたいものである
残り少ない稽古の中でも、日々発見を重ねていきたい

全体を見直し、いくつかこれまで作ってきたものを壊して再構築した
まだまだ伸びしろのある作品となっている

明日は最後のシーンの部分稽古をした上で、通しを行う予定
明後日は台風の影響を考慮して稽古はOFFとしたので、休み前におさらいをしておきたい
急な予定変更となるが、疲れも溜まっている様子も見受けられるていたので、怪我の功名かもしれない
一日一日を無駄にせず、細部を詰めていきたい

(水野玲子)

犬猫会「パラナ・ポラー」

作:マルハ・ブスタマンテ

翻訳:仮屋浩子

出演:宝意紗友莉(文学座)・山下智代(犬猫会)

演出:水野玲子(犬猫会/文学座)

音楽:後藤浩明

​公演期間:2024.8.22-25

会場:STUDIO ZAP!

 

2024年8月14日 (水)

犬猫会「パラナ・ポラー」稽古場レポート05

本日は2日間空いてからの稽古である為、先ずは一場面ずつのポイントをおさらいした後に、通し稽古を行った

今日の通し稽古は探り探りの少し冗長的なものとなった
これまで丁寧に役同士の関係性は作り上げてきたのだから、そこを信じて、そろそろ思い切って流れに身を投じてある種のテンポ感を出しても良いのでは、と役者と話した
何か足りないのではないかと間を作りがち(これは私自身も含め)になるが、それは結果として自家発電になってしまう為、相手からのエネルギーで反応する事が難しくなる
いかに相手からもらったものをまた相手に返していけるか
その際に自分で盛り込まないようにする事も一つ注意したい点である

演劇は反復作業ではあるが、その一回一回が真実でないと、お客様にその世界を信じてもらう事が出来ない
全て作り物の虚構の世界でも、そこに役者がしっかりと生きてくれていれば、真実となるのである
どうしたってこれまでやってきた中での一番しっくりきたものであったり、演出上求められているものに向かおうとするが、何よりも大切なのはその時の自分の心の動きを偽らないことであると思う
よく感情を作り出すことは出来ないというがまさにその通りであり、無理矢理に持っていったとしてもそこにはどうしたってぎこちなさが出てしまう
どうにかしようともがくことは悪い事ではないが、心が動かないときは焦らず、その状況を受け入れて、事実のみを伝えていく、また先程も書いたように自分一人にならずに、相手に開くことが大切なのではないだろうか

とはいえ、現時点でまだ詰められていない箇所もあり、明日は部分稽古を中心として、役者が不安にならずにその瞬間瞬間を信じれるように強度を高めていきたい

また本日は照明の若林恒美さんも来てくださり、大枠の方向性を話すことが出来た
照明の力も大いに重要となる今作、いったいどんな照明になるのか楽しみである

また明日も頑張りたい

(水野玲子)

犬猫会「パラナ・ポラー」

作:マルハ・ブスタマンテ

翻訳:仮屋浩子

出演:宝意紗友莉(文学座)・山下智代(犬猫会)

演出:水野玲子(犬猫会/文学座)

音楽:後藤浩明

​公演期間:2024.8.22-25

会場:STUDIO ZAP!

 

2024年8月13日 (火)

犬猫会「パラナ・ポラー」稽古場レポート04

本日は稽古場を本番仕様の美術にするための本仕込みを行った
美術担当の正岡香乃さんに来て頂き、美術の装飾を完成させていく美術に拘りたいと思って作品作りをしてきたが、犬猫会初期の頃はなかなか自分達だけではやれる事の限界があり、思うように形にならなかった
しかし前回の本公演から美術に正岡さんを迎え、視覚的な効果を生むだけではない、機能的な美術、というものに取り組むことが出来てきている
美術と役者が相互に影響し合える良い関係が今回も出来上がりつつあり、非常に嬉しい
舞台監督の宅間脩起さんのお手と知恵も借りて、作業は着々と進んだ

さて、本日は役者稽古はなかったので、今回演出する上での自分の中にある、ポイントの一つについて少し書きたい

今回の作品はアルゼンチンでも珍しいというSF要素の入った世界観での、女性2人によるロードムービー、そしてその中で変化していくシスターフッドが描かれている

犬猫会ではこれまでにもSF世界観の作品は扱ってきている
その度に考える事が、一体この世界はどこまで続いているのか、そしてこの世界観に身を投じる役者の在り方とは何だろうか、ということである
私がまず台本を読む際に取り組むことは、そう書かれているからそうなのである、というある種絶対的な指針を疑う所からである
これは一人で読む際もそうだし、稽古場での読み合わせの際も徹底的に疑ってかかる
少々意地の悪いというか、天邪鬼の様に思われるかと思うが、私自身はその本を“信じられるかどうか”ということは何よりも大切なのである
このステップは最終的に“信じる”為に必要なプロセスとなる
SF世界観の作品はやはりどうしても自分の常識から離れた部分が多くなり、最終的に納得するまでに時間がかかるが、この腑に落とす作業をやることは急がば回れの法則の一つとして間違っていないと思う
特に役者と共にこの作業をやる事は、共通認識を持ちやすくなる為、その後の稽古がやりやすくなる
それぞれの認識のズレを無くす為にも、初期の読み稽古でどれだけ活発に意見を交わしていけるか

今回はじっくりと読み稽古の時間を作り取り組んだ事で、ある程度の共通認識を持ってここまで進められてきている
ただやはり立ち稽古をやっていく中で発見される事実も多く、稽古時間の配分に関しては中々にバランスを取るのが難しいことを痛感
役者が体に落とし込む為に、ここから1週間は通し稽古をなるべく日々繰り返していき、このSF世界観を生きる体を作っていきたいと思う
明日からの稽古も気を抜かずに進めていきたい

(水野玲子)

犬猫会「パラナ・ポラー」

作:マルハ・ブスタマンテ

翻訳:仮屋浩子

出演:宝意紗友莉(文学座)・山下智代(犬猫会)

演出:水野玲子(犬猫会/文学座)

音楽:後藤浩明

​公演期間:2024.8.22-25

会場:STUDIO ZAP!

2024年8月 8日 (木)

犬猫会「パラナ・ポラー」稽古場レポート03

シーン稽古3日目
本日は8~12場

始まりは体を動かすことから始めているが、今日から部分的に芸中で体を使う箇所など何点かあたることに
ある程度回数をこなす必要あり。

8場
昨日発見した部分も生かしつつ、新しい可能性も探っていった

表層的には笑うという行為でも、その動機や目的は様々である(どの行為でも同じことだが)
そのどれを選び、形にしていくのかが演劇の面白さの一つでもある
観客にはある種のこちらが思う正解を提示していく事になる
ただその正解の形が、ガチガチに固められた枠という事ではなく、本番のその日その時の役者や観客の状態から作り出されるナマである必要があり、稽古場ではあくまで『この道筋だとこうなるよね』という回路をどれだけ見つけられるか、という事になると思う
しかし最終的な目標地点がないとブレたものとなってしまう

昨日の稽古終わりでは、目標地点と違った場所に行った印象があった
その為今日は新しい回路を作って行く必要があると思ったが、しかし何度か繰り返し、昨日の途中過程は案外悪くなかったのかもしれないと思い始めた
それに確定、といった訳では無いが、どこまでは上手くいきどこからが修正した方が良いのか細かく探る
なかなか役者も腑に落としにくい箇所だけに苦戦するが、繰り返す内に体に落とし込んでいっていると実感出来た


9場
動きと緊迫感と、スリリングなシーンであるのだが、それだけでなく二人の根本的な関係性が垣間見える必要のあるシーンでもある
荒立ち稽古では動きを中心に作ったが、やはりここでは二人の差が明確になる必要があり、今日はその部分を役者と確かめていきたい
しかし優先順位を決めてやろうと思うのだが、自分の不得手とする分野には当然のことながら時間がかかってしまい、こういう所の事前準備の重要性を感じる
前回の荒立ち稽古から変わった部分も多くなった
模索の時間とはいえ、少し焦りも感じてしまう
毎回ゼロからのスタートにならないよう、積み重ねていきたい


10場
感情的なシーンこそ、冷静に組み立てていく事が必要である
動きと台詞の連動が上手くいっていない部分をなるべく細かく組み立てていく
ここも、やはり一人にならずに相手とのやり取りにする事が基本になっていくということを実感した
自家発電ではなく、相手の状態から受け取ってそれがまた相手に反応として返っていく、という繰り返し
この繋がりを作りやすいポイントをどれだけ見つけられるか
意識の方向性を一つに絞らずに広げていけるようにしていきたい


11場
根本の喋りだす動機、目的を役者と共有
何のために喋るのか、動くのか
目的を見つけることの重要性
何度か繰り返す中で私の中で見つかるものもあり、やはりある程度繰り返すというやり方は効果的であると思う
今の段階でどこまで自分のノートを伝えるのかという事も、今回改めて調整していっている
良い落とし所を見つけていきたい


12場
役者がやりたい事と実際に見え方の乖離がある場合に、どのように調整していくか
細かく話せる時間がある場合(現段階)は話して調整していくことは可能だが、今後時間が限られてきた場合にどうなるか
一方的にそれではない、という事でなく、こちらのどうしてほしいが何故そうなのか、今は何が違和感なのか、端的に言葉に出来る力が必要となる
演出家として自分の考えを言葉にしていく作業は何よりも大切であるが、私自身はそこもなかなか上手くできない部分でもある為、今後スキルを磨いていく必要がある
そういう意味では、共通言語をどれだけ役者たちと共有する事が出来るかも大事である


今日の稽古も、自分自身の弱点も分かりつつ、それでも前進している実感は持てている
固まることなく、深められる所まで深め続けていきたい

(水野玲子)

犬猫会「パラナ・ポラー」

作:マルハ・ブスタマンテ

翻訳:仮屋浩子

出演:宝意紗友莉(文学座)・山下智代(犬猫会)

演出:水野玲子(犬猫会/文学座)

音楽:後藤浩明

​公演期間:2024.8.22-25

会場:STUDIO ZAP!

2024年8月 7日 (水)

犬猫会「パラナ・ポラー」稽古場レポート02

本日も各場を順番にシーン稽古をしていく。 4〜8場をあたっていった。

4場 
昨日この場は途中までだったので、本日も細かく作っていく
この芝居は二人の役者しか出ない分、その二人の関係性がどのように変化していくのかが重要となってくる
ある意味でここで一つ大きな変化があるような場面となるのだが、その変化への導入が私の中でしっくりいくものが見つかっていない
その見せ方に関して役者と相談し、現時点での表現の仕方を模索

5場 
長台詞を言う際、言葉を紡ぐ役者の動機というものが重要になってくる
役者はそれぞれの言葉を細かく砕いてお腹に落とし込み、その言葉を自分のものにしていく
その過程段階で演出としてどれだけ道筋を提示出来るのか
決めてかかるという事ではなく、あくまで役者自身の生理に沿ったものを見つけるための手助けができるかどうか
私自身、自分の思考を言葉にする作業に時間がかかり、この作業をクリアにスピーディーにしていくことが今後の課題である

6場 
このシーンは動きが多く、役者の身体性が重要となる
観客の想像力にも負う所が多くなる今作品
嘘にならない様に動きを作っていきたいと思うのだが、ここはなかなかダイナミックに見せたいと思うシーンでもあり、そのバランスが難しい
心情的にはどちらかと言うと「静」の方向性で作っていきがちな部分が多いので、動きでのいきなりの飛躍にお客様がついてくることができるのか
自分たちの自己満足という形にならない様にその塩梅を模索した
シーンごとにバラバラな印象を与えかねないという事を肝に銘じておく必要もある

7場
ここで厄介な部分の一つが、シチュエーションとして二人での束の間の休息と言った空気の緩むシーンとなっているのだが、そこに内包されている差別的な発言と言うものをどう解釈するか、という事である
差別を助長したいわけではなく、むしろ自分たちもある意味での差別、余所者であるという認識を他者からされている二人の会話だからこそのこの発言であると考えている
この事が分かる為には、前提として彼女たちがそういう立場の人間であることを分かってもらう必要がある
この部分が、なかなかアルゼンチンと日本の感覚や文化の違いが出てくるところでもあり、ではいかに日本のお客様に届けるのか、そこが重要なポイントとなる
言葉での説明ではなく、二人の態度から示す必要があるので、役者二人と考えを共有しつつ作っていく

8場
ここもまた、二人の会話が別の変化を引き寄せてくるシーンである為、二人の会話が着実に積みあがっていかない事には成り立たないシーンとなっている
そのまま流すことも出来てしまうが、ここをいかに緻密に作れるかで、作品全体の持つテーマが際立ってくるように思っている
その前提を共有しつつ、役者と解釈を深める作業 ちょっとしたきっかけで今までと違った印象にもなるということを発見
明日またこの場から積み重ねていきたい


シーンが多く、覚える事も多い為なるべく回数をやりたいという思いと、しかし丁寧に組み立てていく必要もあるという事で、なかなか難しい。何を優先して作っていくのか、日々精査して進行していきたい。

(水野玲子)

犬猫会「パラナ・ポラー」

出演:宝意紗友莉(文学座)・山下智代(犬猫会)

演出:水野玲子(犬猫会/文学座)

音楽:後藤浩明

​公演期間:2024.8.22-25

会場:STUDIO ZAP!

2024年8月 6日 (火)

犬猫会「パラナ・ポラー」稽古場レポート01

サブテレニアンでの稽古が始まった。これまでは読み稽古、限られたスペースでの荒立ち稽古をしてきたが、今日からは実際の劇場の広さをほぼ取れての稽古が出来るようになる。この作品は上演時間は短いものの、17場という細かく分けられたシーンの連続という形で作られているに、その為、それぞれの場毎で変わりゆく役者同士の関係性、時間の経過による環境の変化等々、いつも以上に様々な事に配慮する必要があり、難しい部分も多い。実際に動く事で気付く事を確かめ、繰り返し、何がこの瞬間のリアルなのかを探っていきたい。今週は動きを中心とした稽古とし、そこに連動していく生理は何かを模索する。今日は1場〜4場までのシーン稽古。荒立ち稽古をベースにしつつも、予定調和にならない新しい可能性を試していく。

1場 始まりのシーン お互いのキャラクター、関係性、この作品の前提をこのシーンでどれだけ伝えられるか なかなか説明的になりすぎる気配があり、そこのバランスもみつつ、しっかりと伝えたいことを伝える 戯曲に書かれている言葉を役者のお腹に落とし込んでもらえるよう、動きを作り、その言葉が出てくる理由を役者たちと模索する

2場 前のシーンからの繋がり 1場で提示した関係性からの繋がりを保ったままの2場への移行が可能かどうか また、役者の心情をどれだけ観客に伝えることが出来るのか 感情を作るのではなく、どの回路を通ればどういった感情に進むのか 回路作りを模索 言葉の難しさもあり、解釈が明確になりにくい部分も多い。役者との擦り合わせにおいて、私自身もなかなか手助けとなる言葉が見いだせない状況

3場 小道具と動きのあるシーン 単純に動きの多い中で、何がリアルで何が面白いか 予定調和だけに動きがならないように、どうしてその動きになるのか、何度か繰り返す中で見つけていく

4場 状況の変化 それまでと違った環境、状況になるシーンであり、ここで分かる事実も多い ここも1場のように説明的になりすぎないよう、どうしてこの話をする事になるのか、その流れを丁寧に探る 言葉で語られている部分と、その根底に流れている部分の両軸を成立させたいので、もっと細かく場の状況を共有して作っていくことが望ましい 今日は途中までとなったので、明日またこの場から詰めていきたい 全体を通して、役者が独りにならないよう、2人しか出演しないからこそお互いの呼吸を感じ合った芝居になるよう調整していくことにも気にしていきたい。
細かい部分に気を取られすぎることなく、全体を俯瞰する目を養う必要があると常々感じている
一日一日の稽古を通して私自身も成長できるよう頑張りたい

(水野玲子)

犬猫会「パラナ・ポラー」

出演:宝意紗友莉(文学座)・山下智代(犬猫会)

演出:水野玲子(犬猫会/文学座)

音楽:後藤浩明

​公演期間:2024.8.22-25

会場:STUDIO ZAP!

 

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