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2020年10月

2020年10月13日 (火)

ことのはbox「班女」稽古場レポート11

本日で稽古最終日。
今日も前日に引き続き、早朝から開始する。
昨日と今日は、本番を想定して、30 分の仕込みから行い、その後通しとなる。 仕込みももうだいぶ手慣れたもので、時間的にも余裕を残して終えることができているの で、その時間を現地での今までとの違いなどへの対応に充てることができるのではと推測 できるので多少の戶惑いがあってもどうにか対応できるのではないだろうかと踏んでいる。
最後の通しではあるが役者陣が皆朝から雰囲気が軽い様子であったのが印象的だった。 各々思うことはあるのだろうが、必要以上の緊張や気負いはやはり芝居を作る上では邪魔 だと思うので、今朝の皆の表情や雰囲気には少し安心するものがあった。
その影響もあってか、通し自体も良い通しであった。 これまで積み重ねてきたものをしっかリ大事に、丁寧に紡げた通しであったのではないだ ろうか。
通しの後は少々休憩を挟み、最後の小返しを少し。 ここ数回のランタイムが短くなっていることにメスを入れる。 この小返しで一部失いかけてた感覚も戻ってきたようなので一安心か。 これを 100%本番で出せるよう臨むだけだ。
総じて、胸を張って良い作品だと言える出来になったと思う。 今回、我々酒井班の「班女」ははっきり言って凝った演出や驚くような演出は全くない。 ただただ愚直なまでに真っ直ぐに戯曲と向き合い、その世界観を、その色と音をただただ誠 実に丁寧に紡ぐのみ。それこそが酒井演出の武器であり見どころだ。 凝ってはいないが、どこにも負けない「拘り」を持って創り上げてきた。 これが見る人の目にどう映るかはもはやその瞬間まで我々に知る由もないが、「コンクール」 という舞台に敢えて可能な限り無駄を削ぎ落とした「引き算の演出」で挑む我々は視点を変 えればある種の飛び道具なのかもしれない。
明日、1 日のオフを設けて明後日の今頃には豊岡にて宿で酒井やスタッフ陣と作戦会議をし ている頃だろうか。 コンクールの結果がどのようなものになるにしろ、我々のやることは一つ。 誠実に芝居を創ることだけだ。

演出助手 岡崎 良彦

ことのはbox「班女」稽古場レポート10

本日は 2 度の通し。 コンクールの運営側からのお達しがあり、当班はゲネ、本番共に早い時間での公演となった ので、本日最初の通しは朝 9 時を集合時間として可能な限り実際に近い環境での通しを行 う。
一見それほど大差のない試みかもしれないが、特に役者陣からしたら入り時間や公演時間 は大変シビアな問題だ。 起きる時間、アップの時間、自分自身を整える時間...様々あるとは思うが、通常の舞台公演 においてこれほど早い時間に本番を迎えることはないのでこういったシミュレーションは 大事だ。
役者それぞれにベストなコンディションがあり、そこに至るためのルーティンであったり 準備などあると思うので、そこに至るまでのプロセスなどについて個々人で差があるだろ うからその感覚を覚えておくことは本当に大事だと思う。
私が演出をするときにもキャストには伝えるのだが、やはりメンタルや身体の状態の管理 だけはどれだけ伝えてもこちらでどうにか出来ることではないので感覚を覚えてもらう他 ない。 普段の公演ではそうそう有り得ない時間帯での作品作りになるため、自分も含めてしっか り集中してやっていかねばならない。
本日の通しは昼夜ともに芝居の内容としては悪くなく、特に夜の通しに関してはこれまで 積み上げたことや直近の返し稽古でやったことなどを大事にしながら演じることが出来て いたと思える通しであった。
テンポや表現の面でさらに突き詰めたい部分は尽きはしないがそれはきっと良いことなの だろう。 まだまだ出来ることがあるというのはもちろん終わりがないということではある反面、 日々役者陣が更なる先へ進み続けている証拠ではあると思うので、この姿勢を崩すことな く、兵庫いりに臨んでもらいたい。
また、個人的な話ではあるが、仕掛けの面ではミスはあったものの実際には大きな問題なく 進めることが出来たのは良いことの一つではあったが一度きりの本番しかないコンクール であることを考えるとやはり、ミスは許されないので現地では殊更に集中して臨みたい。

明日で最後の稽古日を迎え、15 日には兵庫入りだ。 ⻑いようであっという間に過ぎた、というのは稽古をしていると毎度の感覚ではあるが これだけ濃密で深い稽古をできていることは誇るべきことであるし自信にしてもらいたい と思う。
明日は泣いても笑っても最後の稽古日。 更なる高みに向かって実りある稽古であるよう願っている。

演出助手 岡崎 良彦

2020年10月12日 (月)

ことのはbox「班女」稽古場レポート09

本日は 2 度の通しを行った。 日中の通しは、若干役者陣の疲れの見えるかという通しに個人的には感じた。 連日の昼夜稽古に加えて、悪天候による急激な気温の変化。劇中でも少々無理をして声を出 さねばならない部分もあるのでもちろん体力は削られているのだろう。 しかしながら、現地に到着してからはさらに過密スケジュールとなるので、体調管理やコン ディション造りも役者陣の大事な仕事ではある。 また、ダメ出しに於いて演出の酒井が「なぞっている部分が多い」ということにメンション したのだが、見ている間に私が感じた違和感というか、乗り切らない感はおそらくそれなの だろうかと思った。
今回の「班女」はわずか 9 ページ、1 時間足らずの戯曲であるため、2 時間の芝居の稽古と 比べてしまうと必然的に全体を通す回数というのは増えていくし、役者自身もはや何周目 か考えることもバカらしいほど読み込んでいることに違いない。 固定稽古場に入り、固めるべきとこを固め、コンクールのための「完璧性・再現性」にアプ ローチしてゆくに当たり、ある種の「慣れ」や「飽き」はもちろんあるのだろう。 それ自体が悪というのではなく、それに対して 1 役者としてどうアプローチをかけて、ど のようにその状況を打破していくのかがやはり肝となってくると思う。 自分自身もそうだし、様々な演出家が口にすることであろうが、役者は板の上でその役のそ の瞬間を「生きて」いなければならないため、何千何万回と繰り返したシーンであっても常 に新鮮な状態で板の上に立ち、そこで起こること、今まで稽古で起こしてきたことをその瞬 間に嘘無く起こして演じなければならない。 口で言うのは簡単ではあるが、役者陣からすればそれほど難しいことではないだろう。
しかし、酒井演出の真髄、そして「戯曲」というものの確信はやはりその場で起きる微細な 心の機微であり、その上に成り立つ繊細な会話であると思うためにその点については演出 も役者もどこまでも貪欲で敏感でなくてはならないと強く思う。
午後の通しは日中にダメ出しを受け、日中よりは良い通しであったと思う。 残り稽古日数は 3 日間、4 回の通し稽古を予定している。 役者陣には、厳しい戦いではあるとは思うが、改めて新鮮な気持ちでこの戯曲に向き合い、 しっかり板の上で「生きて」、瞬間瞬間で起きる物事に敏感であって欲しいと願う。
また、私個人のことになるが、本日の通しでは仕掛けに 2 度のミス、それも似たようなミス を繰り返してしまったので反省せねばならない。

稽古終了後、演出の酒井に指導を受け、修正を行う。 ひとまず解決策は見えたので明日またミスの無いよう細心の注意を払って仕込みに臨もう。

演出助手 岡崎 良彦

2020年10月11日 (日)

ことのはbox「班女」稽古場レポート08

兵庫入りまで残り 1 週間を切った。 今回はコンクールなのでもちろんだがレギュレーションがある。仕込みとバラシにそれぞ れ 30 分、上演時間 1 時間、いずれも超えてしまってはコンクール失格となってしまう。 そうなると、仕込みとバラシの稽古が当然必要となる。 今回、我々酒井班はコンクールに持ち込むものとしては比較的複雑かつ大掛かりな仕込み と、仕掛けを用意しているため、この部分については念入りに打ち合わせが必要なのだ。 そして、演出助手として稽古についている自分の最大の仕事でもある。
今日はそんな仕込みの練習から開始した。 誰が何を用意し、仕込んでいくのかと、その順序などを洗い、実際に仕込んでいく。 実際にやってみたところ、美術の用意自体は問題なさそうだが、1 番の難関となりそうなの は自分が担当している「仕掛け」の部分だ。 私は恥ずかしながら美術的・舞台監督的な知識や技術は大変疎いので自分自身今の時点で も大変不安だ。
舞台監督経験豊富な演出の酒井から指導受けて取り組む。 時間制限もある点から焦りや慌てが生じ、何度かミスを繰り返し、迷惑をかけてはしまった が頭ではひとまず理解できたと言えるか。 今回の「仕掛け」は芝居の内容にも強く繋がりを持ち、大変重要な要素を担うものであるの で、残りの数日間でなんとかモノにしたい。
サブテレニアンでの稽古ではほどほど実際と近しい状態でやれているかとは思うが、問題 は実際の現場に入ってから無駄なくクオリティを保った仕込みができるかにかかっている。 図面などはもらっているので当日までしっかりイメージをしながら頭の中でシミュレーシ ョンを繰り返すことになるだろう。
3 名の役者陣が良い芝居をしてくれているので自分が躓くわけにはいかない。 再度気を引き締めて臨みたいと思う。
一通り仕込みの練習を終えた後は今日も通しを行う。 疲れも溜まってきているだろう中ではあるが最大限のパフォーマンスを目指す役者の姿は 美しい。 しかしながら、やはり日によってブレる箇所があること、今までうまくいっていたからなん となくナリでやっていたというような部分が浮き彫りになってきたので、改めて再現性を 追い求めて固めるべきところをしっかり固めていかなければならないとう課題も見えた。

それについては役者たちも感じていたようなので、残りの日数できっちり調整してきてく れるのだろう。
自分はそんな役者たちがしっかり輝けるよう、演出酒井の世界観をしっかり具現化出来る よう、やれることをしっかりとやろう。そう思える1日であった。


演出助手 岡崎 良彦

2020年10月10日 (土)

ことのはbox「班女」稽古場レポート07

兵庫入りまで残り 1 週間を切った。 今回はコンクールなのでもちろんだがレギュレーションがある。仕込みとバラシにそれぞ れ 30 分、上演時間 1 時間、いずれも超えてしまってはコンクール失格となってしまう。 そうなると、仕込みとバラシの稽古が当然必要となる。 今回、我々酒井班はコンクールに持ち込むものとしては比較的複雑かつ大掛かりな仕込み と、仕掛けを用意しているため、この部分については念入りに打ち合わせが必要なのだ。 そして、演出助手として稽古についている自分の最大の仕事でもある。
今日はそんな仕込みの練習から開始した。 誰が何を用意し、仕込んでいくのかと、その順序などを洗い、実際に仕込んでいく。 実際にやってみたところ、美術の用意自体は問題なさそうだが、1 番の難関となりそうなの は自分が担当している「仕掛け」の部分だ。 私は恥ずかしながら美術的・舞台監督的な知識や技術は大変疎いので自分自身今の時点で も大変不安だ。
舞台監督経験豊富な演出の酒井から指導受けて取り組む。 時間制限もある点から焦りや慌てが生じ、何度かミスを繰り返し、迷惑をかけてはしまった が頭ではひとまず理解できたと言えるか。 今回の「仕掛け」は芝居の内容にも強く繋がりを持ち、大変重要な要素を担うものであるの で、残りの数日間でなんとかモノにしたい。
サブテレニアンでの稽古ではほどほど実際と近しい状態でやれているかとは思うが、問題 は実際の現場に入ってから無駄なくクオリティを保った仕込みができるかにかかっている。 図面などはもらっているので当日までしっかりイメージをしながら頭の中でシミュレーシ ョンを繰り返すことになるだろう。
3 名の役者陣が良い芝居をしてくれているので自分が躓くわけにはいかない。 再度気を引き締めて臨みたいと思う。
一通り仕込みの練習を終えた後は今日も通しを行う。 疲れも溜まってきているだろう中ではあるが最大限のパフォーマンスを目指す役者の姿は 美しい。 しかしながら、やはり日によってブレる箇所があること、今までうまくいっていたからなん となくナリでやっていたというような部分が浮き彫りになってきたので、改めて再現性を 追い求めて固めるべきところをしっかり固めていかなければならないとう課題も見えた。

それについては役者たちも感じていたようなので、残りの日数できっちり調整してきてく れるのだろう。
自分はそんな役者たちがしっかり輝けるよう、演出酒井の世界観をしっかり具現化出来る よう、やれることをしっかりとやろう。そう思える1日であった。


演出助手 岡崎 良彦

2020年10月 9日 (金)

ことのはbox「班女」稽古場レポート06

本日は予定通り 2 度の通しを行う。 日中の通しは「母音のみで台詞を発する」通しを行った。
昨日のレポートでも触れた、現状弱みになると思われる「発語」へのテコ入れだ。 三島由紀夫の台詞は美しい。読み物として字面を追ってもその美しさは感じにくいかと思 う。少なくとも自分はそうであったのだが、実際に役者が板の上に立って、脚本が立体化し た時にその美しさは鮮明に浮き彫りとなる。さすが三島由紀夫といったところか。 その「美しさ」を表現するには徹底した「発語」の精査は欠かせない。 あなたが小劇場のお芝居を観に行った時、どれだけの作品でどれだけの役者が正しく日本 語を発語出来ているだろうか、演出家はそれだけそこにアプローチをかけているだろうか、 また仮にされていなかったとして観客であるあなたはそれに気づけているだろうか。
もちろん、大半の人にとっては内容が最低限聞き取れて、話を追うことができれば十分なの かもしれないが、今回の『班女』のような作品ではそれだけでは足りない。 三島由紀夫の独特な台詞回し、言葉のチョイス、そういったものの美しさを申し分なく発揮 するには美しい日本語、正しい日本語が不可欠となる。 日本語は子音と母音の組み合わせで構成されているのは今更語るまでもないが、「発語の悪さ」は子音と母音のバランスに起因しているため、母音のみで台詞を発するというのは明瞭 かつ美しい発語へのアプローチとしては理にかなっている。
実際に本日は母音のみの通しをやってみたわけだが、やはり、というか、現状の「発語の甘さ」を如実に浮き彫りになったので、残り 1 週間で役者達が徹底して修正のためのアプロ ーチをかけてくれることを期待したい。
そしてもちろん、三島由紀夫の世界を表現するための「発語」でもあるが、そこに加えて今 回はコンクール。 通常の公演であれば、いい日もあり、悪い日もあり、はある種許容されるものではあるが、 今回のコンクールは当然ながら一発勝負。 正確性、再現性、完璧性が不可欠となってくるのだ。100 回やれば 100 回同じものが作れる ような Accuracy が求められる。 演出の酒井も普段はここまでのことは言わないが、今回ばかりはそこに注力をせねばなら ないので今日のようなアプローチとなった。
役者たちは困惑していたようだがこれが更なる飛躍に繋がることを願う。

加えて、母音で台詞発することにより、言葉や字面に囚われることなく、内面が浮き彫りに なる感覚は新しい体験として役者たちも感じることができたと思うので、それはその感覚 として、いい方向に持っていってもらえたらと思う。
毎日、やればやるほど発見と向上がある稽古なので全員で前を向いて最後の最後までしっ かり積み重ねていきたい。

演出助手 岡崎 良彦

2020年10月 8日 (木)

ことのはbox「班女」稽古場レポート05

本日は固定稽古場に入って初めて、日中の通し稽古から始まる。 これを執筆している時点ではまだ、コンクールの上演順が決まっていないので、これも大事 な稽古だ。 マチネとソワレでは、役者のコンディションの作り方や維持の仕方などがやはり変わって くるので、どちらもやっておくべきだ。夜稽古ばかりしてきて、いざ本番でのマチネで違っ たコンディションになってしまうのは普段の公演でも頻繁に起こることだ。 アップの仕方や集中の仕方など、個々の役者によって当然ながら違ってくるのでこればか りは実感して個別に調整してもらうより他にない。
本日の通しは、ランタイムとしてはベストなとても良いリズムで進んでいたことが特筆す べき点だ。元々ランタイムはほぼほぼ似たようなところで安定はしていたが、ここにきて演 出の理想とするタイムに乗せることができたのは大きい。それぞれの役者の中に、そして役 者同士のやり取りの中に相互理解がなければランタイムを安定させることは難しく、また 伸ばしたり縮めたりということも容易ではない。これまでベストなタイムより若干短いか というところで安定していたものが本日の通しでベストタイムに乗り、且つ短かった部分 が埋められたというのは役者同士のやり取りの中の共通認識がこれまでよりも更に深まっ たからではないだろうか。
通しの内容としても、決して悪いものではないが、まだ若干のミスが残るのでそこはしっか り修正していかねばならない。個人の印象としては、全体として若干力の入った通しであっ たように思う。緊張感は大事ではあるが、同じくらいにリラックスして自然体でいることが 大事だがそれこそ一番難しい部分ではある。 これも先の話にあるよう、役者個々人のコンディション作りに拠る部分が大きいので上演 前からのリズム造り、コンディション造りには細心の注意を払ってもらいたいと思う。
通しの後は修正箇所を洗っていくわけだが、今日もまた新しいものが生まれた。この段階に なってもこうして次々と新しいものが生まれ、それを組み込む余地があるのは役者それぞ れが演出の意図を汲んで、キチンと打てば響いてくれるからこそ出来ることなのでいい状 態で稽古を進められている証拠なのだろう。 現状で少し気になるのは発語の面と所作・立ち振る舞いの動きの面だ。 特に動きに関しては自分はダンスをやっていたこともあって特に目がいきがちなのだが、 やはり視覚情報というのは一番に飛び込んでくるものなので言葉を発していなくてもその 一挙手一投足で役の人となりが見えてくるものなのでもっともっと繊細で、シビアであっ てもらいたい。役者みんなが踊れたり動けたりすることに越したことはないが、そうでなく

ても自身の体のことをしっかり理解してそれをどう使えば良いか、どう見えるかなどを考 えられるようであって欲しい。 改善は日に日に見られるがそれに関しては若干ムラを感じるので後一歩といったところか。
明日は 2 度の通しを予定している。特に 2 度目の通しでは、疲れの中でどうパフォーマン スを上げられるのかは一つ大事な要素になってくるのではないだろうか。 明日の稽古も楽しみだ。
演出助手 岡崎 良彦

ことのはbox「班女」稽古場レポート04

本日の稽古も小返しから。 日々細かい調整と修正を重ねてゆく。
突然ではあるが、酒井演出の現場では「美しい」「美しくない」というワードが頻繁に舞う。 立ち位置、距離感、出で立ちに立ち振る舞い、発する言葉とその音、そして役の内面に至る まで、「美しいかどうか」というのは彼女にとって作品を測る一つの大きな指標であると思 う。 この彼女の言うところの「美しさ」はもちろん、均整がとれていたり、いわゆる通常の視覚 的あるいは聴覚的な「美的感覚」に訴えかけるものは勿論ではあるが、その真髄はより感覚 的、本能的部分に訴えかける「美しさ」にあるように思っている。 もちろん、それは決して必要以上に抽象的なものではなく具体的であり、かつ明確に伝える もの、明確に人の心に刺さるものをして「美しいもの」としていると感じている。
ここまでの稽古で演者たちも酒井の意図する「美しさ」に触れてきたが、ここへきてそれが 演者たちにも染みついてきているように感じていている。 演出酒井の発する「美しくない」に対して対応する役者を見ていると、演出と役者が互いに 信頼し、お互いに「創作」をしていると強く思えるのだ。 昨今の小劇場界隈ではやはりこういった現場はやはり希少だと思うし、大変貴重な体験で あろう。 これもやはり、前日にも触れた"コンクール"という形態が持つ特異性が影響していたりす るのだろういが、やはり演劇というものはこう創っていきたいと思わせる作品づくりを演 出・酒井はしてくれる。
自分自身も一演出家として、見習いたい反面、彼女とは違った自分にしか出来ないアプロ ーチで人の心を掴んでやりたいと強く思ってしまう。
後半の稽古では今日も通しを行った。 今日もやはり「今日の通し」ではあったのだが、皆、そろそろ無意識に疲れが溜まっていた のか、少し力が入っていたのか、細かいミスの目立つ通しであった。 そしてそれらも小返しでは出来ていた部分ではあるので、役者のメンタルや集中力の因る 部分が大きいか。 小返しで出来ていたことが、全体の流れの中で出来なくなることは非常に残念としか言い ようがないので、演者たちにはここをなんとか踏みとどまってもらいたい。 今日の通しで一番良かったことは美術の仕掛けが今までで一番上手く行ったこと。 これは、この酒井演出の「斑女」において重要な部分であるので少し安心できる要素だ。

これについてはまた後日詳しくメンションしたいと思う。


演出助手 岡崎 良彦

2020年10月 6日 (火)

ことのはbox「班女」稽古場レポート03

集中稽古 3 日目。 本日も小返しから始めていく。更に細かい部分の変更・修正から入っていく。 と言っても、これは「良くない部分・足りない部分の修正」というよりも、「より良く出来 る部分・新たな発見への探索」と呼べる非常に前向きなものだ。 前日の通しや、美術が入ったことにより更に広がった世界観を受けて、より緻密かつ繊細な 表現や、より納得のいく表現を求めて丁寧に小返しをしていく。 役者個人の特性や彼ら自身の持つ「音」を考慮しながら、全体の音と距離感・空気感をより 高度なものへと昇華する作業は、酒井演出の最も得意とすることであり、最大の武器と言え るだろう。
ここまで「音」にこだわる演出家に出会ったのは酒井が初めてだ。 演出家である酒井自身のビジョンももちろんではあるが、先に述べたように役者個人の持 つ音色や空気感がより酒井演出の世界観と溶け合うよう修正を加え、また、「こう言ってみ てはどうだろか」などと新しいものへの挑戦も繰り返していく。
今回、コンクール作品かつ 3 人という少人数キャストであることもあって、これだけこの 段階でこういった作業に没頭できることは演出としても、演者としても、非常に稀有な体験 をしているのではないだろうか。 普段の劇団公演では、様々な理由があってここまでこの作業に没頭することもなければ、ど ちらかというと演出家としてある程度の取捨選択を求められる時期であり、そういう状態 であることが多いのだが、今回はそうではない。
最後の最後まで貪欲に 演者たちはもとより、演出の酒井自身がこのことに対して最も楽しそうにしているのが見 ていて伺える。
夜は照明さんの見学を入れての通し。 演出助手として側で見ている自身の感覚として、先に述べたような稽古状況であるから、前 回と比べての良し悪しよりも「次はこうしてみたらどうか」「こういったこともできるのか もしれない」という感想が先に立つ。 今日の通しは今日の通しだった、というのが自分の率直な感想だ。もちろん、既に固まりつ つある部分で再現性の取れていない部分があったり、細かいミスはあれど、ここまで積み上 げてきたものに関しては役者個人の中でしっかり定着してきている感覚がある。
1 つの 1 つの通しで、実りと発見があり、そこに対して一丸となってアプローチしていく姿 は、これぞ「創作」だと言えるだろう。

明日も、またその次の日も、更に貪欲に新しく、より高度なものへの欲求を高めていっても らいたい。


演出助手 岡崎 良彦

2020年10月 5日 (月)

ことのはbox「班女」稽古場レポート02

集中稽古 2 日目の本日からは、役者も入っての稽古だ。
まずは、これまでの稽古場になかった置き道具やセットに慣れるため、また変更点を修正
するための時間に充てていく。
演出の酒井が先日コンクールで使う現場の下見に行ってきたことを受けてそこに対して
いくつか修正点が生まれたのでそこにも対応していく。
今回はなんといっても通常の劇団公演ではなく"コンクール"という形であるため細かい修正は都度入っていく。
昨日、自分と演出家である酒井の 2 人で色々と試行錯誤を繰り返した仕掛けについても実験が必要だ。
これまでの稽古になかった置き道具やセットに戸惑いながらも、完成に近づいていく 様子にどこか高揚感を感じさせる役者たちをみていると長く近くで見ている自分として は嬉しくもあるものだ。
今回はコンクールに持ち込む作品なので、通常の作品作りのように【ざっくりと現場合わせ】のようなことは許されないので演出にもキャストにも緊張感と集中力を強く感 じる前半の稽古であった。 緊張や不安といったものよりも、「意気込み」といった類の感情を強く感じることができ たのはとても良いことだろう。 度重なる変更や調整に柔軟に対応していく役者陣の姿を見ていいると、俳優というものは兎角すごいものだと改めて感じる。 これは自分自身が演出をしている時も同じように感じる。 固定稽古場での最序盤での役者たちの高揚感は見ていてとても小気味のいいものだ。
そうして一通りの確認作業を終えた後、稽古の後半は通しを1回。
今日の通しは、演出の酒井も言ってたように全体としてとても良い通しであったと思う。 原因は色々あるだろう、客観的に見て、前回の稽古までで積み上げてきたものと、前回までの役者個々人の課題を踏まえた上で前向きに取り組んでいる姿勢を見ること ができたし、その中でもまだ貪欲に先を目指す態度が功を奏したこと、そしてまた、実 際の置き道具やセットに触れながら演じる中でより深く役を生きることが出来ていたよ うに感じたので、これから先 1 週間が非常に楽しみだ。

今回はコンクールとして、仕掛けを扱う自分や、音響及び照明も含め一丸のチームとしての出来が問われるところではあるので、演者陣に負けぬよう自分も取り組んでいかねばと改めて引き締まる思いのする演者たちの好演だった。
だが彼らもここからがやはり正念場。 自分自身が演出する時もそうだが、常にフレッシュな思いで、その時その場を役として、再現性を持って演じて欲しいと思うので演者陣の目下の課題は再現性であろうと思う。
そこをこれからしっかり育んで行って欲しいと思っている。
明日以降も現状に満足することなく、日々実りある稽古ができるよう、そしてそれがしっかりと実を結ぶよう、自分の立場からできることをしっかりやっていきたい。


演出助手 岡崎 良彦

2020年10月 4日 (日)

ことのはbox「班女」稽古場レポート01

本日からサブテレニアンにて集中稽古の期間に入るのだか、今日一日は美術の試行錯誤の日として、役者はオフ日になっている。

美術を試行錯誤する話をここで書くのもなんなので、今回の作品である、三島由紀夫『班女』の演出プランの話でもしようと思う。

今回はコンクール仕様なので、演出プランが少々堅苦しいが、そのまま載せることにする。

 

『班女』演出プラン

この作品は、2 人の狂女の情念が完全無欠の状態で完成する、幸福の物語である。

■私はこの戯曲を下記の解釈によって演出する
花子の希望は吉雄の訪れによって永遠になった。待ち人であった吉雄ですら花子の「生きる」世界にとって人間でなかった以上、花子はこれからも永遠に吉雄を待ち続けることができる。それは永遠の希望を手に入れたことと同意である。絶対にもう訪れない「待ち人」は永遠であり、その望みが終結を迎えることはな
く希望の燈心は消えることはない。
実子は、自らの意思で狂人たるを得ている。「不」実現な世界(誰からも愛されることのない世界)を生きる【実子】は、「未」実現な世界(吉雄を待ち続ける世界)を生きる女【花子】を待ち人と出逢わせない為に策略を巡らす。そうすることで【愛されない自分】が【愛される希望】を持つのではなく【私ではない誰かを心から愛する人】を愛し、また自分の擒にする事で、互いを必要としあう幸福を得る事が出来る。そうすることで「未」実現な世界がある限り、停滞的な幸福の持続状態というものが得られるのである。
そして二つの情念の形は、花子の待ち人が永遠になったことで、実子の世界は完全に閉じられ、完成を迎える。実子と花子の共依存関係は完璧な幸福の形で完結する。


この解釈に基づき、稽古を進めてきた。
三島由紀夫の紡ぎ出す言葉の美しさに打ちひしがれながら、世界を構築してきた。
ここに、更に、美術的要素を加えて、稽古をしていく。


明日からは役者を入れての稽古となる。
3日間のオフになってしまったこと、また、今までの稽古より、劇場の下見等々を経て、少しサイズ感を変更した事を踏まえて、明日は丁寧に確認作業をしていくつもりである。

なんにしろ、明日の稽古が楽しみだ。

 

酒井菜月

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