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2016年9月25日 (日)

板橋ビューネ2016参加劇団インタビュー:MIRレパートリーシアター(韓国)「今生きている人々と演劇以上に強烈な交流はないと思います。」

板橋ビューネ2016「ナンセンス」(http://itabashi-buhne.jimdo.com/)に参加する劇団に、劇団の軌跡や、みどころについて、別冊サブテレニアンがインタビューをいたしました。おのおのの劇団の魅力に気付かされる点が数多くありました。ぜひご一読ください。

MIRレパートリーシアター(韓国)「 今生きている人々と演劇以上に強烈な交流はないと思います。

板橋ビューネ2016:劇団MIRレパートリーシアター&YAEGIシアター「不条理を調理する---イヨネスコ『授業』、『欠陥』、ベケット『大団円』」(@東京・サブテレニアン:10月7日20:00~/8日19:00/9日14:00)

Mir
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このインタビューにお答えいただく方のお名前と劇団の中での役割を教えてください。

 

A 李哉尚(イ・ジェサン)です。劇団MIRレパートリーの代表と常任演出をしていて、劇作もしています。日本の劇団ATMANの芸術監督も兼任しています。

 

 

---劇団のメンバー構成、人数、役割などを教えてください。

 

李 韓国は最近劇団員制をとっている劇団がほとんど無くなった状態で、団員がそれほど多い状況ではないですが、主要団員は私を含め8人で、専門スタッフが3名、5名の役者で構成されています。そのほかに団員ではありませんが公演があれば必ず参加するスタッフがもう数名いて、役者の中にも常にうちの劇団の作品に参加する友人たちが10人余りいます。


---一番最初に上演した作品について教えてください。

 

李 私のデビュー作ということですと、1982年ドルチェ小劇場で俳優として参加した「チョン・ボンジュン裁判」という作品です。私も最初は演技から始めましたから。


---劇団の代表作について教えてください。

 

李 2008年の旗揚げ公演である、「水の記憶」(この作品は日本でも2度公演しました)と、「ミッドナイト屋台」、それから私のオリジナルではない作品としてはチェーホフの「ワーニャ伯父さん」などが劇団の代表作だと思います。


---思い出深い公演がありましたら教えてください。

 

李 意外にも昨年発表した「星が降りてくる!」という作品が記憶に残ります。私は個人的に作品を早く脱稿したがるほうですが、この作品はほかの作品と違って書くのに4年もかかって、終わってもずっと力尽きた状態でした。今でもその状態から完全に回復したとは言えないほどですから。だからでしょうか?ほかの作品よりとても高い評価と反応がありました。いろいろと記憶に残る作品でした。
意外にも昨年発表した「星が降りてくる!」という作品が記憶に残ります。私は個人的に作品を早く脱稿したがるほうですが、この作品はほかの作品と違って書くのに4年もかかって、終わってもずっと力尽きた状態でした。今でもその状態から完全に回復したとは言えないほどですから。だからでしょうか?ほかの作品よりとても高い評価と反応がありました。いろいろと記憶に残る作品でした。


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劇団の旗揚げから現在まで、思い出深いエピソードがあれば教えてください。

 

李 いろいろなエピソードがありますが、最近のことというと昨年夏のことです。「水の記憶」の韓国語バージョンを東京で公演しに来たのですが、そのうちの一人の俳優が酒に酔うと一人消えてどこかでもう一杯飲むという酒癖がありました。しかし、その人は日本語も英語も一言も知りません。公演を終えた次の日は一人で消えて、とても心配していましたが、宿に帰るとそこで寝ていました。問題はその次の日です。帰国前日なのでみんな宿で軽く一杯飲んでいたのですが、急にその俳優が消えたのです。1時間ほど俳優たちで探していると、私に電話をかけてきたのです。ローミングもされていない状態で、周りをもう一度探していたのですが、どこからか韓国の歌声が聞こえてくるのです。ついていくと、近所の小さな居酒屋で、近所の人と酒を飲んで歌っていたのです。もちろんお互い対話が通じない状態なので、身振り手振りでした!(笑)

 また、もう20年ほど前のことですが、私が脚色と演出をしてピノキオを公演したことがあります。ですが、急に次の場面のセットが動かないのです。上を見ると、基本セットに構造物が引っ掛かって動かなおのです。3メートほどの高さなのですが、急に解説者役のコオロギ役の俳優を送り出して、セットの上に登って構造物を取り除いて次の場面に移った記憶があります。その時は若かったですから。今ならば登ろうという気にもならないと思います!


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板橋ビューネ2016に参加した理由を教えてください。

 

李 今年で3年目ですが、うちの劇団でも外国の観客と出会うということはいろいろといい経験です。また、ほかのチームの公演を観てともに交流するのもいい勉強になると思います。今年からは公演方法が少し変わり、ほかのチームとの交流が少し難しくなるという感じはありますが…。

Mir2
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今回のテーマ「ナンセンス」について、感じたことを教えてください。

 

李 時期に適切なテーマだと思います。この頃世界を見るとナンセンス、それ以上ですから!


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今回上演する作品をえらんだ理由は何ですか。

 

李 前の質問とつながる話ですが、不条理劇であっても不条理劇のように感じない世の中になったからと言いましょうか。事実私は正統派の演劇をより多く作る人ですが、「授業」で扱う意思疎通の問題、「欠陥」で扱う人間の虚偽意識と充足への熱望、そして「大団円」で扱う権力の暴圧と強要などが日常になってしまった世の中になったという感じです。そして多くの人々が不条理劇は難しいと考えますが、そんなに難しい不条理劇が日常になってしまった世界で不条理劇をやるというのが面白いと思ったのですね。


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今回のみどころを教えてください。

 

李 これも前の質問とつながる話ですが、意思疎通が足りないとき、権力のある者とない者の関係がどう変わるのか?そして、必要のないことに対しての渇望のために没落する人間、また権力の暴圧と強要が常に起こる世界、このような不条理が日常になってしまった私たちの姿を、普段私たち自身はそれほど認識しないで生きているということですね。ですから作品を観ながら、このような登場人物の馬鹿らしくて滑稽な姿を充分に楽しんで、そのあとで今の私たちの日常と一度比較して考えていただければ幸いです。


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好きな劇団、劇作家、演出家、俳優など、演劇の分野でのお気に入りがありましたら教え下ください。

 

李 個人的には劇作家マックス・フリッシュとアントン・チェーホフが好きです。演出家としてはタデウシュ・カントルに興味を持っています。


---好
きな音楽、本、人物など、演劇以外の分野で影響を受けたもの(人物)がありましたら教えてください。

 

李 仏教哲学と中国の老荘思想(老子と荘子)に影響を受けたといえますね。作家としてはドイツのヘルマン・ヘッセ、韓国のイ・チョンジュン、日本の村上春樹などが好きです。SF作家の中ではロジャー・ゼラズニーが一番好きです。音楽は全般的にすべて楽しむほうです。


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昨今、日本でおきていることで気になることは何かありますか。

 

李 そうですね、やはり最も大きく感じる問題は「原発問題」そして、「憲法改正」でしょうか? 日本は「自衛権」と言いますが、周辺国の立場では「日本再武装」の始まりに見えるのは事実ですから。


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昨今、韓国でおきていることで気になることは何かありますか。

 

李 全般的に心配されます。日本と似たように、政治権力の右傾化が現れていますが、今韓国の右翼は右翼とみるのも難しい点がありますので。紙面上長くお話しすることはできませんが、政治権力が市民の言うことを聞かないという問題が一番大きいと言えます。ものの見方が大いに偏っています。

それから、経済的にも非常に無図解時期に来ています。日本のバブル崩壊と似た現象も多く起こっていて…そうしてみると、様々な問題が複合的に韓国社会を脅かしています。若い世代が心配です。今の社会が、若者たちが自分の夢や未来のために準備できる要件を作れないでいます。率直に言うと、気にかかる程度ではなく、惨憺たる心情です。


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演劇を好きになったきっかけはなんですか。

 

李 中学校3年の時に偶然演劇を観て、1本学校でしたりもしましたが、とても面白い分野だという思いと、ともに率直に意思疎通ができるという感じを受けました。


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演劇を始めたきっかけはなんですか。

 

李 実は、私は初め文学をしていました。詩や小説です。そして、もう一方で哲学を学んで、人々と私が発見した世界を分かち合いたかったのです。そうするうちに演劇をすることになったんですね。最初は文学の勉強のために3年間だけやろうと思ったのですが、3か月後に考えが変わりました。ほかのジャンルよりも永く残る分野ではないけど、今生きている人々と演劇以上に強烈な交流はないと思います。だから演劇を続けることにしました。私にとって演劇は「公演を通した意志疎通、そしてそれを通した共同進歩」です。


---たくさんのお話を聞かせていただきありがとうございました
。昨年、一昨年と板橋ビューネでMIRレパートリーシアターさんの作品を拝見して、その美しさに感銘を受けました。俳優さんの技量にも魅了されました。今回も楽しみにしています。

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