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2016年8月30日 (火)

板橋ビューネ2016参加劇団インタビュー:テラ・アーツ・ファクトリー「演劇が社会とその共同体に生きる者のある種の鏡とするなら、絶えず別の表情、姿を映し出す鏡であるべきだと思います。」

板橋ビューネ2016「ナンセンス」(http://itabashi-buhne.jimdo.com/)に参加する劇団に、劇団の軌跡や、みどころについて、別冊サブテレニアンがインタビューをいたしました。おのおのの劇団の魅力に気付かされる点が数多くありました。ぜひご一読ください。

テラ・アーツ・ファクトリー「 演劇が社会とその共同体に生きる者のある種の鏡とするなら、絶えず別の表情、姿を映し出す鏡であるべきだと思います。

板橋ビューネ2016:テラ・アーツ・ファクトリー『三人姉妹 vol.1』(@東京・サブテレニアン:9月29日19:30~/30日14:00,19:30/10月1日14:00,19:30/2日14:00)

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『恋 其ノ参』(2016)撮影:石澤知絵子

---このインタビューにお答えいただく方のお名前と劇団の中での役割を教えてください。

 

A 代表の林英樹です。

 

 

---劇団のメンバー構成、人数、役割などを教えてください。

 

林 劇団体制を取っておりませんので固定したメンバーというのは現時点ではいないのですが、長く関わっている人が多いです。最長は現在の団体の前身の劇団からの滝康弘で38年、彼は知的な面での強力なブレーンです。横山、井口とは14、5年の付き合いになります。今回の舞台では日常部分と非日常身体、双方を背負っております。若林、関山、加藤、長尾はワークショップからの付き合いで10年~5年となります。

 

 

---一番最初に上演した作品について教えてください。

 

林 『サバイバル・コロニー』(1985年、江東文化センター大ホール)、東京アートセレブレーションというフェスティバルで勅使川原三郎や岸田事務所+楽天団(『恋』上演)、劇団解体社、海外の劇団などが参加しておりました。

 

 

---劇団の代表作について教えてください。

 

林 『メタアイランド』、『CATALY』、『デズデモーナ』、『ノラ』シリーズ、『アンチゴネー/血』、『ジュリエット/灰』、『ヒロコ』、『最後の炎』、『マテリアル/糸地獄』。

 

 

---思い出深い公演がありましたら教えてください。

 

林 『カサンドラ』(1999)公演。公演中止になりました。それがきっかけで濃密な集団作業の必要性を感じ、2000年代に某専門学校で教えてました元教え子たちと10年近く集団創作を行いました。

 『カサンドラ』はそれまで10年ほどヨーロッパに出かけて得た経験、特に冷戦崩壊と同時に始まったユーゴスラビア内戦と内戦を契機としたヨーロッパ演劇人の様々な活動に刺激を受け、戦争をテーマとしたギリシア劇と現在の戦争を対置させる構造の作品をめざしました。プロデュース公演として集めた俳優たちとの作業は困難を極め、結局、公演までたどり着くことは出来ませんでした。その失敗と挫折が深く影響し、その後の活動の基盤となっております。

 

 

---プロデュース公演とのことですが、どのような集団だったのですか。外国の方もいらっしゃったのですか。

 

林 小劇場から新劇まで、20代~50代まで全部で40名の俳優によるプロダクションです。カナダ人も一人いました。

 

 

---その時の経験があって、いまがあるのですね。劇団の旗揚げから現在まで、思い出深いエピソードがあれば教えてください。

 

林 『デズデモーナ』ペルー公演(1996)。公演終了直後に日本大使館占拠事件があり楽屋見舞いに来てくださった青木大使や歓迎会を開いてくださった日系人の方たち多数が人質になったこと。タイミングが少しずれていたら私たちもそこにいた可能性があった。

 『デズデモーナ』クロアチア公演(1999)。この公演は日本人パフォーマー1名、残りの俳優・パフォーマーは全てクロアチア人でしたが、丁度、コソボ紛争が始まり、NATO空軍機がユーゴ(セルビア)に爆撃に行く空路の途上に開催都市があり、参加のフェスティバル自体が中止に追い込まれました。しかし、現地メンバーがこういう時こそやるべきと頑張ってくれて、かなり苦闘しましたが結局、実現いたしました。
 
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『デズデモーナ』(2014)撮影:森信英 
 
---板橋ビューネ2016に参加した理由を教えてください。

 
林 以前からサブテレニアンで公演をしたいと考えていたところ丁度タイミングが合った、ということです。

 
 
---ありがとうございます。今回のテーマ「ナンセンス」について、感じたことを教えてください。


 
林 今回の作品がこのテーマに合っているかどうか迷いましたが、大きな枠組で戦後日本の国家レベルの物語をナンセンスと捉えてみると戦前と戦後の非断絶をテーマとしたこの作品と入れ子構造を作ることが出来るのではないかと考えました。私たちが生きる時間、生きてきた時間は戦後日本に属するわけですが、この作品は「平和国家」、「戦前とは断絶した民主国家」という私たちの思いこみ、想念の物語に対してその固定観念を打ち砕く批判性を持っている、少なくとも疑問符を提示するための応答を試みているテクストであると考えました。演劇が社会とその共同体に生きる者のある種の鏡とするなら、その鏡は同語反復であってはならない。絶えず別の表情、姿を映し出す鏡であるべきだと思います。この作品を通して戦時と戦後の断絶を個人レベルから見ると何が変化したのか、あるいは変化しなかったのかが表出されていて、同時に現在、保守政治家などによって物語化されつつある「戦後レジーム」なる言説を異化する、つまり物語を解体する(無意味化/ナンセンス)ような、ある種の亀裂を生みだしうるテクストと思えたのです。
 
 
---興味深いお話です。今回のみどころを教えてください。


 
林 時間を主題にしています。

 日常の会話部分と非日常身体との対置により、私たちの存在を根拠づけている「人間性」とその根拠となる文明、特に近代文明の中で人間の自然性の喪失、日常からの死の消失を反映する身体の様相を批評対象とし、同時に非日常身体によって構成される時間軸の提出によって過去、記憶ということで成立する個人幻想の解体を内包した舞台になると思います。

  
  
---好きな音楽、本、人物など、演劇以外の分野で影響を受けたもの(人物)がありましたら教えてください。
 
林 ピンクフロイド、ディープ・パープル、ボードレール、ランボー。

 
 
---昨今、日本でおきていることで気になることは何かありますか。

 
林 人が壊れつつある。そんな中、1936年ベルリンオリンピック、1940年幻の東京オリンピックを想起させる国威発揚のオリンピックが4年後にあるが、その間に壊れかけた人間を絆、団結という繰り返し使われてきた薄っぺらな精神の抑圧構造でまとめて行こうとする勢力が政治家、財界、マスコミなどを支配しつつあるのが不気味。ただただ今の日本は不気味です。

 
 
---昨今、韓国でおきていることで気になることは何かありますか。

 
林 演劇に対する検閲。パク・グニョン氏の作品の排除に象徴。

 
 
---パク・グニョンさんは、劇団コルモッキルの方ですか。助成金の辞退を強いられたり、国立伝統音楽院での上演が直前にキャンセルされたことなどでしょうか。

 
林 はい、そうです。

 パク・グニョン氏はコルモッキルの主宰・劇作家・演出家です。

 15年前に彼の『代代孫孫』をリーディング演出したことがあります。彼の戯曲の日本での初訳初演だと思います。

 
 
---
昨今、世界各国でおきていることで気になることは何かありますか。

 
林 紛争の拡大と人種、宗教による差別、偏見の増幅。その根底に欲望のシステムである資本主義がグローバル化によってもはや国家や政治のコントロールを越え、世界を少数の富める者と多数の貧困層という形で分断しその対立が先鋭化しつつあることがあげられる。衝突の度合いはより深まりどこかでこの世界は破綻するのではないかと感じている。

 
 

---演劇を好きになったきっかけはなんですか。

 
林 いつ好きになったのかわかりません。好きかどうかもわかりません。やっていると苦しいことの方が多いです(笑)

 
 
---演劇を始めたきっかけはなんですか。

 
林 学生時代、劇団座長の友人に手伝いを頼まれたのですが、その後、彼が失踪し所属する役者を含め、全ての責任を背負うことになりました(笑)
 
 

---貴重なお話をいただきありがとうございました。

私も含めた、演劇を志す人たちにとって、得るところが大きいです。上演もとても楽しみにしています。

(文責:さたけれいこ)

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