シグナルズ「あなたがいたから」 稽古場レポート06
6月8日(土)
本日は昼夜と二回の通し稽古をした。通し稽古が始まる前というのは一種独特の空気が流れるものだ。役者は自分の演技がいいものとなって、確信をえる稽古にしたいと、期待と緊張でいっぱいだ。それを見ている演出家の私もそわそわと意味もなく稽古場を歩きまわって落ち着かない。じっと座っていられないのだ。
もう出来ることは限られているということもある。
もう、ベースとなるところは作られている。何回か前のレポートに試すことの大切さを書いたが、さすがにもう大きな試しはできない。もちろん小さな実験は日々役者が行っているが、もうこれからの稽古は大筋では変らないものを、体に、心に染み込ませる稽古になる。
つまり、繰り返すこと。うまく繰り返すことが大切になってくるのだ。
明日小屋いりでもいいものを見せられる自信はあるが、更なる高みを目指して通し稽古に臨んだ。
昼の通し稽古は、昨日の通しは良かったものの、少し力みが感じられたので、それをとっていこうと指示をした。
結果とても見やすい、押し付けがましくない芝居になったと思う。
役者に力が入っていない分、見ている側も緊張せずにある意味気楽に見られるできだったと思う。
が、今度は少し芝居が熱にかけ、物足りなくなった感じもしたので、駄目出しではその点を指摘した。実際小返しもしてもう一度、芝居の細部を調整する。
休憩を挟んで夜の通しだ。
夜の通しは、これまでの通しの中で一番いい出来となった。
力が入りすぎず、かといって抜けすぎず、盛り上がるべきところではグッと盛り上がり、軽くみせるべきところでは軽くシーンが流れ、なんともいい感じで物語が紡がれていってラストへとなだれ込んだ。
稽古場レポートでこんなことを書くのはおかしな話かもしれないが、やはり稽古はすべきなのだ。できているシーンを繰り返してなんの意味があるかと思ってしまうこともままあるが、やってみれば新しいことを発見できたり、役者の体に役がなじんだりする。
演出家は稽古の目的を必ずしも設定して稽古する必要はないと思う。
稽古をただ素直に見ていればおのずから、そこに必要なものというのは見えてくるものであるからだ。邪念、雑念なく見ていれば。
だから、稽古はすべきなのだと思う。いついかなる時でも。
さて、明日は稽古最終日、またまた小返しからの通し稽古だ。
いい形で劇場に入れるように準備したい。
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