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2013年6月 7日 (金)

シグナルズ「あなたがいたから」 稽古場レポート04

6月6日(木)
 
 
今日は最初に、主人公の女性役のシーンを中心に稽古した。この役を演じる女優がもうあるレベルにはもちろん達しているが、また違ったアプローチをすれば、より役が観客に伝わるのではないかとの提案もあり、試してみることとした。
試すということはとても大切だ。ある形が出来上がっていてそれを壊すのではないかと、試すことを躊躇してしまうこともままあることだが、せっかく時間を使って稽古しているのだ、あらゆる可能性は探っておきたい。
大筋の方向性は定まっている。それはもう簡単には揺るがないとの自信もあるのだからやればいい。私も役者もできうる限りのトライはしてきたから、またここで新たなことを試せる。
そういった状態にあることが良いと思う。
 
結果、試した方向性は採用されなかった。
 
彼女が試した方法はより内心を提示する方向だったのだが、それでは役者の意図と観客の受け止め方に差異が出てしまうと思ったのだ。
役者は役の内心を分かっているからそれを最初から提示していきたいのだが、観客は役者の内心を段々と芝居を追うごとに分かっていくのだから、最初から提示しすぎると、逆によく人物が伝わらない感じだった。
 
非常に微妙な心の揺れを演じているので、役者がここは伝わるのかと心配になって上にかいたような方法でやってみたいと思うのは分かるのだが、微妙だからこそ内心をしっかり持ってその時々の相手との関係に身を委ねて、観客に役の気持ちを想像してもらう方法の方がいいということになった。
 
試したことが採用されなかった訳だがそれは無駄ではもちろんない。
 
試したことで、ディスカッションしたことで、役者は今までの方法で間違っていなかったんだと確信を持てたと思う。それは役者の演技の力強さを一段アップさせることになった。
 
漫然と今までやってきたことを繰り返すのではなく、疑って試すことの大切さを改めて知ることとなり、よかったと思う。
ベースを作り、試す。その繰り返しが稽古なんだなと思う。これは今回の公演の稽古に限らずこれからも覚えておきたいことだ。
 
それが終わったら、また各シーンの小返しをしていく。
 
と、稽古場にちょっとした化学反応が起こった。
 
今までできていたことが、もっとよりよくできるようになったのだ。うまく説明できないが、役者がノッている状態が生まれた。
例えば今まで思いつきもしなかった立ち位置で芝居をする役者が現れ、それが今までより断然いい。シーンが効果的になる。
 
語尾に今まで無かった小さな笑いをつける役者が出てきたそれが役のいやらしさをより際立たせた。
 
いままで気付かなかった本当に小さな隙間が埋まる瞬間が出てきた。
 
それが一人の役者にとどまらず、殆どの役者にあった。
 
稽古場がうねる感じがある。
この瞬間を迎えられたことで、この芝居は本当に何とかなるのではないかと思えた。
 
やはり、役者はお互いに影響しあっているのだ。
 
同じ空気の中で、言葉にせずとも、役者同士が共鳴すること。それを見られるのは演出家としてはとても嬉しいことだ。
 
何とかこの空気を劇場まで持ち込むように、残り3日の稽古を、繰り返し書いているが油断せずにして、もっともっといい作品にしたいと思いを新たにした稽古だった。

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