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2012年6月 6日 (水)

ブルーノプロデュース 橋本清 インタビュー

 6月20日から25日まで、サブテレニアンにてブルーノプロデュースの『サモン』(SENTIVAL! 2012参加)が上演されます。ブルーノプロデュースは、2009年にもサブテレニアンで公演を行っていただいたことがあります。(『カシオ』2009年12月)
 その後、主宰の橋本さんは東京デスロック演出部での経験と、ブルーノプロデュースでのいくつかの公演を経て、《ドキュメンタリーシリーズ》という作品を作りはじめます。今回上演される『サモン』は、その第三弾です。今回は稽古場にお邪魔して、稽古見学をさせていただいたあと、橋本さんに作品制作についてお話をうかがいました。



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 橋本清(ブルーノプロデュース主宰・演出)



 1988年生まれ。身長190cm。
 ブラジル、リオデジャネイロ出身。

 東京デスロック演出部所属。
 日本大学芸術学部演劇学科演出コース卒。




 ----- 今日は楽しく稽古を拝見させていただきました。俳優さんの演技につける橋本さんの演出がとても面白く、また矢継ぎ早やであることに感心しました。



 今はできるだけたくさん引き出しを作ろうとしている段階です。まとめる作業はもう少し先になります。今日稽古で流していた音楽も、本番では全く使いません。そもそもブルーノプロデュースの音楽は、去年から涌井智仁という人が担当しているのですが、本番一週間くらい前になると彼が稽古場に来て、その場で色々打ち合わせして、オリジナルの音楽が作られていきます。本番で使われない曲を永遠と稽古で流し続けているので、涌井君の曲を使っていざ稽古してみると、作ってきたシーンが別の物になります(笑)。けど、僕の意図がダイレクトに作品に組み込まれていかないので、「それがいいな」と思ってやっています。

----- 音楽を一週間で? 全てにおいてフットワークが軽いのですね。俳優さんたちの演技を見ても、フットワークのよさを感じました。
今回は SENTIVAL!2012 に参加して、Ustream 配信されている公演のアフタートークにも橋本さんは積極的に出席されていますね。フェスティバルに参加しての感想はいかがですか?



 ただ劇場を借りて公演するのと違って、人との触れ合いがあるのがよいですね。ブルーノプロデュースを知らない人たちと接することが多いので、≪ドキュメンタリーシリーズ≫という、今僕たちが取り組んでいることをいかに他者に伝えていくか、ということも今まで以上に考えるようになりました。これまで「みえない敵」を想像しては自滅しかけることが多々ありましたが、今は「みえる味方」と演劇活動をしている感覚があります。それは創作する際のモチベーションにも繋がるので、今回参加してみて凄く良かったです。まだ公演は終わってませんが(笑)

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----- ≪ドキュメンタリーシリーズ≫は、俳優の記憶をベースに演劇作品を構成するそうですね。橋本さんは「人の話を聞くのが面白いと感じて、そこから作品を作ってみようと思った」と、過去の公演のアフタートークで語っていますが、詳しくお聞かせいただけますか?

 僕が演劇をはじめたのは、高校の演劇部で、その頃は役者をずっとやっていたのですが、自分の中には「書きたい」「演出したい」、という二つの欲求が常にあったんです。その後、日芸の演劇学科の演出コースに進学して、ブルーノプロデュース名義ではなく、大学の同期といくつか芝居を作っていたのですが、どうにも二つの欲求のバランスがとれないことが多々ありました。そして、文学でも映画でも音楽でもインプットすることが極端に少なかったので、ネタ切れしました。そんな時に人の話を聞いて、いろんな刺激を受けたんです。それで「自分の実感ではなくて、人の実感で作品を作ってみたい」と思いまして。「未知なるものへの憧れ」というようなものが強くなって、例えば他人の記憶のような、全く僕には関与できないものを 、「僕は知らない」というスタンスで扱ってみたくて、それで今は俳優の記憶をもとに演出をするという方法をとっています。



----- 「人の話を聞いて刺激を受けた」とのことですが、例えば話のお中のどのような部分を面白いと感じているのですか? 今日の稽古では他人に甘えるという経験について、俳優さんが話したり演じたりしていらっしゃいましたが、それのどこを面白がっているのでしょうか?




 そうですね。矛盾する答えになるかもしれませんが、俳優の話す内容が面白いと思っているわけではないんです。もちろん面白い話をしてくれる時もあるのですが、その内容を面白いとは思わないようにしています。それよりも、「甘えるという状態やその記憶を、舞台で再現するというのはどういうことなのか」ということに興味があります。
 僕は舞台で記憶を言葉で語ろうが、身体で再現しようが「それって所詮うそじゃん」と思ってしまうので。中身より形。形式、様式でしょうか。
 中身が何でもいいわけではなく、中身ありきの形なんですけど、その形を舞台で扱う上で、「なんだろうこれ」というひっかかりを、自分の中でずっと持ち続けられるものを採用しています。
 記憶を立ち上がらせるという、「見えないものを見える状態にする」ということを考えていきたいんです。



----- なるほど。「俳優の記憶を聞き出す」という方法から、私は心理カウンセリングを連想して、カウンセリングは記憶を言葉にすることで記憶の体系化を図り、それがリハビリになるわけですが、橋本さんは何をしたいのだろうと思っていたのです。ですが、今お話を聞いて、言葉にするのではなく、演劇として成立させることに興味があるということがわかりました。また「それは可能なのか」という形式への問いがあるということなんですね。
 橋本さんが「見えないものを舞台にのせる」ということにこだわっているのはどうしてですか?

 

 「演劇が見えすぎる」ということにあるのかな、と思います。演劇は基本的には、劇場という限定された空間で、決められた時間の作品が上演される、時間的にも空間的にも凄く限定されたものだと思います。出演者も目の前に存在します。舞台に俳優が立っているだけで、もう全部見えちゃっている。完結している気になるんです。それは、記憶を扱ってきたから感じることかもしれませんが、現在がはっきりと見えている空間で、どれだけ過去のことを語っても、剥き出しの今が存在していると、なかなか過去が立ち上がっていかないんです。
 でも、「見えないものもどこかにあるんじゃないか」と常に思っていて。俳優が立っている現前性だけじゃなくて、例えば「俳優が立っていない奥の空間って何だろう」「俳優が今ここに立つ前は何をしていたのだろう」と思った時に、「見えないものを追求したい」と思ったんです。


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----- それが記憶だったということですね。 話は変わりますが、 アメリカに「山の麓で」という、フェミニズムの問題に取り組んでいる劇団があって、「個人的なことは政治的なことである」というポリシーから、俳優から話を聞くというやり方で芝居を作っていたのだそうです。その後、人種問題など様々な問題を抱えている人々に取材をして作品を作るようになったそうですが、橋本さんも、俳優以外の、社会で暮らす人々に取材をすることには興味はないですか? テレビや新聞で報道されているようなことでは全然なくて、実際に社会問題に直面している人々の日常というか。日常そのものは些細なことでも、社会とのかかわり方が違うと思うんですよね。恋人との不和で悩むところを、裁判のことで悩んでいるとか。橋本さんなら、きっと、独特の面白い見方で捉えてくれるのではないかと思いまして。



 取材に行って作品を作るということになると、今とは全く違う作り方になるでしょうね。今の作り方だと、話を聞く相手が俳優に限定されてしまうということは確かにありますね。また、俳優たちとの作業は、記憶に対して、いかに嘘をついていくかにかかっているので、取材した「記憶」の扱い方も考えなければいけません。
 今度、秋に福岡で「えだみつ演劇フェスティバル2012」(※注) というものに参加するんですが、自分たちの作品を上演するのとは別に、フェスティバル会場の枝光の町の人々と一緒に作品を作る機会があるんです。それは、俳優以外の一般の方々も参加するものなので、新しい試みになるのではないかと思います。

-----それは楽しみですね。 年齢も職業も様々な方が集まるのですね。新しい視点が見つかりそうですね。

 それでは、今回の作品『サモン』についてお話をうかがいたいと思います。病気を題材にしているということですね。



 はい。俳優の記憶を扱う≪ドキュメンタリーシリーズ≫は今回で三作目なんですが、一作目の『カシオ』(2011年10月@横浜STスポット)では、小学生の冬休みの記憶を題材に、「記憶を俯瞰する」ような感覚で作りました。二作目の『ワールド・イズ・ネバーランド』(2011年12月@王子小劇場)は、上演した時期がクリスマスだったということもあって、「記憶を装飾して、包装する」ような感じで作ってみました。中高生たちのモラトリアムの記憶をベースに。見世物ということを意識して、星が空から降ってきたり、バイクを出したり。小さい記憶をできるだけ大きく誇張する、その振れ幅が面白いんじゃないかと思って。
 今回の『サモン』では、「記憶への没入」をキーワードにしています。それは、記憶の「芯」を扱うようなイメージです。
 例えば「悲しい」「寂しい」「苦しい」といったネガティブな感情を、ダイレクトに表現することは可能なのか、という問題がずっと自分の中であって。舞台上で俳優が必死に叫んだり、泣いたり、怒ったりしても、僕はそこに切実さを感じることができないんです。目の前に人間がいるだけで十分重いというか、「もうわかってるよ」というか、人間を感じられる(つもりでいる)のに、そこでさらに感情を出されると重たすぎて、観てるこちらが恥ずかしくなってしまうというのがあって。『サモン』は切実なものに取り組みたいです。それで「切実なものは何だろう」と思ったときに、「病気なんじゃないかな」と思って。


----- なるほど。『ワールド・イズ・ネバーランド』では死を題材にされていましたが、病気は生死の「死」に近い状態ですものね。切実でも「生」をとると、恋ということになるのかもしれませんね。
  橋本さんはブラジル出身で、ブラジル国籍も持っていらっしゃるそうですね。ブルーノという劇団名も、橋本さんのブラジルの名前からきているそうですね。私が「不思議だな」と思ったのは、たまたまかもしれませんが、『カシオ』では冬休みの記憶が題材で、
『ワールド・イズ・ネバーランド』は死が題材で、クリスマスの公演ということもあり、スーパーボールが降ってくるシーンなどは、どこか雪を想像させたりもして、ブラジルから連想する「夏」とか「暑い」などのイメージとは真逆だな、と思ったんです。それは意識してそうされているのですか?



 僕はブラジルで生まれましたが、三歳の時にはもう日本に来て、ずっとここで育っているので、心は日本人なんです(笑)。記憶は季節との親和性が非常に高いので、どの作品も四季を大切にしています。だから、冬に公演する時は冬の記憶を扱いたかった。今回の『サモン』は6月だから梅雨を舞台にした。単純な理由です(笑)性格的に、ブラジルのような、一般的に抱かれるラテンでキャッチーでギラギラなイメージのものはなかなか作れません。反対に冬や梅雨のように、じめっと、淡々とした中に、微かに動いたり囁いたりするようなものの方が個人的には心地よいです。
 『サモン』が終わってから、≪ドキュメンタリーシリーズ≫の新作を、8月、9月、10月と立て続けに発表する予定なのですが、8、9月はおそらく元気いっぱいの作品になると思います。夏なので(笑)。



----- それは楽しみです。それにしても、学生の時からずっと、精力的に作品を作り続けていらっしゃるのですね。橋本さんの視点はとても正直で独特なので、今後、何に取り組んでいくのか楽しみだな、と思います。本日はお忙しいところありがとうございました。

2012年6月3日
聞き手:さたけれいこ

ブルーノプロデュース『サモン』(SENTIVAL!2012参加)
@SUBTERRANEAN
2012年
6/20(水)20:00
21(木)休演日
22(金)20:00
23(土)15:00/19:00
24(日)11:00★/15:00/19:00
25(月)15:00/20:00
★終演後トークを行います。
詳細はこちら

※注 えだみつ演劇フェスティバル2012
福岡県北九州市にある枝光本町商店街アイアンシアターで2012年9月から12月にかけて行われるフェスティバル。ブルーノプロデュースの参加は10月の4週目。
参加団体:
(社)文化創作集団[Gongter_DA]、のこされ劇場≡、渡辺美帆子事務所、集団:歩行訓練、ブルーノプロデュース、金魚(鈴木ユキオ)、時間堂、dracom+けのび、シアターカンパニーOrt-d.d、劇団しようよ、すんぷちょ、なんばしすたーず、ガレキの太鼓、鳥公園 


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