サイマル演劇団『女主人』[対談:赤井康弘×大信ペリカン]1
2011年2月、満塁鳥王一座主宰の大信ペリカンさんに誘われて、福島市の如春荘という、福島大学の施設である古い一軒家で、とある公演を観た。福島大学の星野共教授の企画による朗読と舞踊の公演だ。如春荘は元は大学の寮として利用されていたという。星野先生の企画の本来の目的は、次の日に会津で行うワークショップだったのだが、徳田ガン氏と上野陽一氏という講師の方が、せっかく東京から来てくれるのだから、ということで、公演は余興のようにひそやかに行われた。交流会に参加した後、大信さんの自宅にて、満塁鳥王一座の劇団員で、照明を担当している麿由佳里さんも交えて、この対談は行われた。3月11日の震災の前の対談だが、満塁鳥王一座が予定していた6月の公演も開催することが決定している。被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。そして、一日も早い復興のためにできる限りのことをしたいと思います。
福島・仙台・東京
赤井 一番最初は黙って芝居を見に行ったんだ。福島におもしろいことやってる劇団があるってどこかで聞いて、当時の劇団員たちで見に行ったんだ。
大信 そうそう。
麿 そうなんだ。
赤井 そのあと、仙台戻って反省会したんだけど。
麿 反省会?
赤井 あとでペリカン君には言ったけど、「あいつら、なんなんだ」、て。福島の駅前にテントたてて、しかもそこでやってるのは口語体の芝居で。そのときの俺たちには、ものすごく変わったものに思えたんだ。でも、その後、もうひとつ芝居を見て、・・・それがすごくよかった。
大信 その後か。仙台の「70年代生まれの演劇人たち」で会ったのは。
赤井 そうそう。
---仙台から三角フラスコ、サイマル演劇団、盛岡からよしこ、福島から満塁鳥王一座という4劇団の代表が集まって行ったシンポジウムですね。
赤井 その頃、仙台では90年代中盤から後半にかけて、劇団の数が増えたんだよね。50くらいあったのが80くらいになって。でも、その後ずいぶん減ったみたいだね。
麿 福島も、勢いがなくなってる気がする。
大信 それはね、結局俺らが悪いんだよ。面白い芝居が無いんだよ。
---大信さんは仙台など、福島以外で公演する機会が増えていますよね。福島に拠点を置きながら、東京、仙台で芝居をうつという活動の仕方を考えていらっしゃるのですか?
大信 最近そうなりつつあるよね。
赤井 今回「SENTIVAL!2011」でやる公演は福島ではしないの?
大信 郡山でやって、いいのができたら仙台でやろうって。
赤井 福島市じゃないんだ。
麿 公演する場所がなくて・・・。
大信 それが、さっき、ね。
赤井・大信 如春荘っていう・・・
麿 如春荘は、うちの劇団の名前を言うと追い出されるから。昔、深夜まで稽古をやって、怒られたりしてたから・・・。
大信 それが、さっき、如春荘を運営している福島大学の先生と知り合ったんだよ。「如春荘を売ってしまえ」という話があるんだけど、それを阻止して、美術館と連携して展示を行ったりとか、いろんな活用の仕方を考えているんだって。
麿 へえ。そんな出会いがあったんだ。いい場だったんだね。
大信 サイマル演劇団は仙台では公演しないんですか?
赤井 東京に出てきた頃は余裕がなかったと思う。仙台で公演するという選択肢は考えたことがなかった。でも今は、前と比べると気持ちは余裕が出てきたかもしれない。あと、最近思うのは、稽古場もって、芝居つくって、というんだったら、地方の方が絶対いいと思ってる。
---「シアターアーツ」の2010年秋号に、星野先生が寄稿されていて、その中に大信さんや、仙台の10-BOXの八巻さんら、南東北で演劇活動をされている方のお話が取り上げられていますが、那須で活動する「A.C.O.A」の鈴木史朗さんも同じことを言っていますね。「首都圏で稽古場を確保して、作品づくりに集中することは 極めて難しいが、那須ではそれが可能だ」と。
赤井 鳥取県の「鳥の劇場」もそうだよね。
大信 役者はどうですか? 東京は上手な人がいっぱいいるでしょう? 東京は作品や目的に合わせた役者を選べますが、こちらは劇団を作って育てなくてはいけない。
赤井 東京の5千人よりも、福島の50人の方が出会う可能性が高いんじゃないかな。ただ、東京で小劇場にとって唯一良いところは、悪口を言われることだと思う。地方だと、悪口を言われる対象になっていない。所詮、素人の、友達がやっているお芝居だから、と思われている。
大信 批評という問題と関わっているんでしょうね。悪口を言うほど成熟していない。
赤井 少なくとも東京では言われる。それと、マーケットが確立していることとは別だと思うけど。ただ、鳥の劇場は、今も追随している人がいない新しいモデルなんじゃないか、と思ってる。同じことが福島でもできないかな、と思ってるんだよね。 俺は、それが民間から出てきてほしい。
大信 そうなると、観客の動員数も相当数ないとダメでしょう。
(2に続く)
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