yagi_soir 矢ヶ崎聡智氏インタビュー
2010年9月11日にサブテレニアンで公演する yagi_soir の矢ヶ崎聡智氏に、作品のことを中心にお話をうかがいました。矢ヶ崎氏は信州に暮らし、東京で上演するというスタイルをとっています。(この記事は別冊サブテレニアン9,10 でご紹介した記事と同じものです。)
--------どのような時に作品を着想されるのですか?
今回の「ひ、ろみ。」のきっかけは、スーパーで受け取ったレシート。
求めた品々の(美しいほど詳細な)印字をながめてゐると、そこに(あるはずのない)「差替」用の女の太腿が割り込んできて、好き勝手に騒ぎはじめるのです。
きっかけはいつも、極く瑣末で卑近なものです。ただ、それはたちまちに慾深い「女(たち)」の猥らな遊び場の、入口になるのです。
-------地元の長野県や、東京以外の地で公演することは考えていらっしゃらな いのですか?
難しいと思います。私の住んでゐる地で「演劇」とは(今でも)緞帳の降りてくる商業演劇のことです。
「小劇場」そのものが存在しないのです。
---------テキストを俳優(女優)が発語するにあたり、気をつけていることが何かありましたら教えてください。
この日は、一日だけ「女優」を“off”にして((一寸だけ)気取り乍ら)「私」さへ見失って「女」を悦しむやうに、それだけを命じます。
皆様にも、この夜は「劇場」ではなくマンディアルグの云ふ“あの”「地下サロン」風の場所の心積もりでお出掛けください。(多少(?))壊れた、をかしな「女(たち)」がお出迎へいたします。
-------yagi_soir の公演は、淫靡で背徳的ですが、女優だけで演じられる故か、性につきまとう暴力性や嫌悪感を感じることがなく、観た後もあたたかな気持ちになります。終演後も、出演されていた女優さんがお酒を注ぎに来てくださったりと、とても和やかな雰囲気です。いらっしゃるお客様に、何か一言ございましたらお願いいたします。
信州の地酒を御用意して、お待ちしています。
(怖い事も痛い事もありませんが、もしかしたら「あ、なたと」何かハプニングがあるかもしれません。)
お会いできることを楽しみにしています。
yagi_soir で俳優(女優)は特殊な息遣いをする。矢ヶ崎氏は「私たち(演じる側も、観客も)はそれぞれに異なった『日常』と『背景』を持っており、それらは究極、理解し合えない」と考える。「それらのすべてから(等しく)遠ざかりたいのです。(生理的に)『感じ』ることだけを、それも『心地よい』ことだけを。そうして、あらゆる属性を削ぎ落とし、最後に残った『男』/『女』が融ける瞬間、そこに『息』が残るのです。」『ひ、ろみ』ではその息遣いを楽しんでほしい。
矢ヶ崎氏は信州に暮らし、東京で上演する。「様々な条件に恵まれず歳とともに芝居から離れてゆく方も多いが、それでもなおその方にとって芝居が必要なものであるならば、こうした上演スタイルが考案されていってよいのではないか」と氏は言う。知識も経験も積んだ演劇人が歳とともに芝居を打たなくなってしまうのは、観る側としてももったいないことだ。氏のスタイルには賛否両論あるだろうが、私は支持したい。
(聞き手:さたけれいこ)
---y、2010『ひ、ろみ』2010年9月11日 20時半〜 会費:500円-----
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